前橋商の192センチ右腕に幹部クラスのスカウトが集結 投げる姿は高校時代の佐々木朗希を彷彿 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 セットポジションから1球1球、丁寧に投げ込む姿には、ロマンと繊細さが同居していた。本人は「体はめちゃくちゃ硬いです」と打ち明けるが、投球フォームにはぎこちなさがない。体幹部からしなって投げ下ろしたボールは、捕手に向かってぐんぐん伸びてミットを強く叩く。その勢いは、まるでボールが自分の意思でミットの先へといきたがっているかのようだった。

 清水は「つい3週間前までは、球が走っていなかったんです」と明かす。

「伸びもスピードも出ていなかったんですけど、ふたつの大学の練習に参加させてもらって、大学生のボールを見るなかで『スピードじゃないな』とわかりました。スピードよりもボールの回転数だったり、フォームだったりが大事なんだなと。自分のストレートのいい時は、ボールがデカく見えるんですけど、そういうボールをつかみかけているところです」

 いざ実戦のマウンドに上がっても、清水は捕手の米山泰成のミットを激しく打ち鳴らした。立ち上がりから花咲徳栄打線を無失点に抑えていく。

 だが、昨秋に関東ベスト8まで勝ち上がった花咲徳栄打線は強力だった。主軸の石塚を欠いても、4回表には3安打を集中して3点を奪っている。ただし、前橋商守備陣はこの回だけで3失策を喫しており、清水にとっては不運な状況だった。

 それでも、清水はバックを責める言葉はいっさい吐かず、花咲徳栄を称えた。

「強いとは聞いていたんですけど、打線のレベルが高くて、コースに投げないと打たれることがわかりました。自分の真っすぐがどこまで通用するのか試したくて、真っすぐ中心で押したんですけど、今日は変化球のコントロールが悪くて。もっと完成度を高めないといけないなと感じました」

【甲子園は行かなければいけない場所】

 予定していた6イニングを投げ抜き、被安打10、失点6。奪った三振は1個だけだった。だが、最速147キロを計測するなど、指にかかったストレートは鮮烈な印象を残した。未完成な肉体面を含め、素材としては2024年の高校生右腕でトップクラスだろう。

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