桐光学園・森駿太は松井裕樹以来の高卒ドラ1を目指す イチローに似た所作と歌舞伎役者のような華 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 森は2ストライクに追い込まれると、スタンスを広げてノーステップ打法に切り替える。それまでの豪快なフルスイングから、コンタクト重視の打撃スタイルに変えるのだ。森は3打席とも最後はノーステップ打法になり、必死に食らいついた。それでも、結果は無残だった。

 昨秋の神奈川大会を制したチームも、苦戦を強いられた。8回終了時点で3対8とリードを許し、桐光学園にとって敗色濃厚の展開になった。

 9回表、二死走者なし。あとがなくなった場面で、森が5回目の打席に入った。東海大相模の2番手左腕・藤田琉生(りゅうせい)からも初対戦で二塁ゴロに抑えられており、この日の森は4打席ノーヒットに終わっていた。

 5打席目も2ストライクと追い込まれた森だが、藤田のスライダーをノーステップ打法でセンター前へと運ぶ。やられたままでは終わらない。森の意地を感じた一打だった。桐光学園は森の安打を皮切りに3連打で2点を返している。

 5対8で敗戦した試合後、会見場に現れた森の目は潤んでいた。

「秋の(関東大会準々決勝の)山梨学院戦で負けてセンバツ出場を当確にできず、1月26日にセンバツ出場校に選ばれなくて、その日から常に勝ちにこだわってきました。1日も負けないだけの勝利への執念を持ってきたつもりでしたが、勝てなかった。これからいっそう、死に物狂いでやらないといけないと感じています」

 東海大相模の福田に対して、ここまで完璧に抑えられた経験もなかったのでは。そう聞くと、森は低いトーンでこう答えた。

「やってきたことは間違っていないと思うのですが、今日は打ちきれなくて自分の弱さを露呈しました。このレベルのピッチャーになると、強いスイングのなかでいかにミートできるかがカギですが、今日は自分のスイングができなかった。完全に自分の力不足です」

 最終打席でのセンター前ヒットには、森の強い思いが感じられた。その点について聞くと、森は「自分が一番、執念を見せないといけない立場なので」と振り返った。それでも「あれが最初から出たら、チームの勝ちにつながったはずです」と反省が口をついた。

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