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甲子園初の完全試合を生んだ「松本の3センチ」...前橋・松本稔「その瞬間、スピードもコントロールもカーブもすべてよくなった」 (2ページ目)

  • 藤井利香●取材・文 text by Fujii Rika

【完全試合は誰のおかげ?】

 その「運」を引き寄せたキーワードとなるものを探してみる。まず、完全試合成立には投手の力だけでなく、バックを守る野手の力も必要だ。当時のチーム、じつは鉄壁の守備とはほど遠く、いつも誰かがポロリとやるのが当たり前だった。

「前橋のグラウンドって小さな石ころが混ざっていて、ひざをついたりすると痛いんです。でも甲子園の土は柔らかく、体で止めれば何とかなった。そのおかげで、みんなちゃんと守ることができたんです。ちゃんとというよりは、やっとさばいたというほうが正しいんですけどね。エラーが多かった二塁手の田口(淳彦)が『完全試合は俺のおかげ』なんて言ったけど、本当にそのとおりです」

2022年からは古豪の桐生で監督を務めている photo by Sportiva2022年からは古豪の桐生で監督を務めている photo by Sportivaこの記事に関連する写真を見る そんなチームならガチガチに緊張していてもおかしくないが、前橋ナインには不思議と緊張とも無縁だった。宿舎ではリラックスして過ごし、試合当日もいつもどおり。

「期待されていないからです。それで余計なストレスが生じなかった。応援してくれる人がたくさんいるからその人たちのためにも1回は勝たなくちゃ......みたいな気負いは申し訳ないけどなかった(笑)」

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