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斎藤佑樹「ストライクを取る感覚を失ってしまった」 崖っぷちの状態を救ったのはデータ導入と背番号1への変更だった (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 高校野球や大学野球なら、たとえ自分がチームの真ん中にいなくても優勝を喜べると思います。でも、プロは活躍することで評価されることもある。言い換えれば、プロの選手の仕事はまず個人としての数字を出すことであって、チームを勝たせるのは監督の仕事という考え方もあります。自分がまったく数字を出せなかったなかでの優勝でしたから、もどかしい思いはありましたね。

 日本シリーズでもメンバーには入れませんでしたが、日本一の瞬間はバックアップ要員として広島にいました。試合はベンチ裏で見ていましたが、周りからの「おめでとう」の言葉を素直に受けとることができない自分がいました。それでも心が折れることはなかったんです。なぜならこの時期、僕はピッチャーとしての新たな可能性を見出すツールに出会っていたからでした。

 それがデータです。

 トラックマンがチームに入ってきて、自分のボールの特徴が数字で見られるようになったことで、野球選手としてのフェーズが変わって、すごく楽しくなりました。抑えるということはピッチャーにとってうれしいことですけど、どうやって抑えたのかが目に見えてわかるのはもっとうれしい。

 時代によって抑え方が変わったりして、それも興味深い。僕の強さがないボールでも、違うアプローチの仕方が出てくると思ったんです。そうか、今までは気づかなかったけど、これが得意な球種だったのかとか、こういう感覚で投げた時にこういう数値のボールが投げられていたのかとか、発見だらけ。今まで自分のなかでぼんやり考えていたことが数値になって出てくるんです。もう、おもしろくておもしろくて、野球に取り組む気持ちがデータのおかげでガラッと変わりました。

【背番号が18から1へ】

 僕のボールは、ほかのピッチャーよりも抜きん出ているわけではありません。でも、僕の特徴と言える軌道、回転、スピードのボールはありました。

 バッターというのは、過去の経験からきっとこういうボールが来るだろうと予測してバットを出します。つまり、平均値をイメージしているんです。だから何かひとつでも平均値から外して、戦略を立てれれば、それが特徴になります。

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