斎藤佑樹「ストライクを取る感覚を失ってしまった」 崖っぷちの状態を救ったのはデータ導入と背番号1への変更だった (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 先発として勝負する以上、5回でオッケーみたいなノリにならないよう、6回、7回を当たり前のように投げ切らなければと強く意識していた記憶はあります。2012年の終わりに肩を痛めてからそういうハードルのようなものが下がっているなと感じていただけに、それをこれ以上、下げたくないという意地はありました。

 ただ、2014年は2勝、2015年は1勝に終わって、そういう状況から一刻も早く抜け出さなきゃいけないという焦りもありました。思えば、アマチュアの頃は仲間のおかげもあって、勝つことの難しさを深く考えたことのない野球人生だった。だからこそ、勝つことの難しさと向き合う日々はキツかった......勝つことだけでなく、ストライクを取ることさえ、本当に難しくなっていたんです。

 ストライクの取り方は3つあると言われるなかで、自分はどうやってストライクを取ればいいのかわからなくなっていた。空振り、ファウル、見逃し......そのどれでもストライクを稼げないんです。だったらもう、ツーシームとかカットボールで内野ゴロを打たせればいいのかな、という発想になっていたと思います。あの頃は、ストライクを取れるという感覚を完全に失っていました。

【データ導入で世界が変わった】

 それでも、ごくたまに指にかかる感じが出ることがあったんです。そういうボールを投げられる時には、ストライクを取ることも勝つことも簡単に思える。指にかかる時と、そうでない時の差が激しすぎて、投げてみないとわからない感じが続きました。指にかかるとコントロールにも自信が出てくるし、かからないと自分のフォームさえわからなくなる。終わってみれば2016年は先発が......3試合でしたか。リリーフが8試合で、0勝1敗。そしてチームはリーグ優勝を成し遂げました。

 敵地でのライオンズ戦で優勝を決めた時、僕も西武ドームに呼ばれていました。そのシーズン、一度でも一軍で投げていたピッチャーは声をかけてもらっていたんですが、やっぱり自分が戦力になっていないことはわかっていましたし、活躍していないなかでの優勝というのは正直、複雑な気持ちでした。

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