「独立のギータ」徳島インディゴソックス・井上絢登を待ち受けるのはプロか、野球引退か (3ページ目)
「なぜ、自分だけNPBに行けないのか?」そんな恨めしい感情はないのかと聞くと、井上は苦笑しながらこう答えた。
「それは自分の実力なので......」
そして、意を決したようにこう続けた。
「でも、今年はやれることをやって、実力をつけてきたつもりです」
今年、ドラフト指名がなければどうするつもりか。そう尋ねると、井上はきっぱりと答えた。
「野球をやめようと思っています。今年が最後だと、かけています」
富山サンダーバーズとの試合では、こんなシーンがあった。定位置わずか後方の平凡なライトフライで、一塁走者の井上がタッチアップ。二塁にヘッドスライディングして、セーフをつかみとった。
「試合前のシートノックを見て、ライトの肩があまりよくないと思ったので。ここは行けるな......と」
井上はそう語るが、結果的にバックネット裏で見守る大勢のスカウト陣に向けた強烈なデモンストレーションにもなった。
もしNPBに行けたら、自分をどのように使ってもらいたいか。最後にそう尋ねると、井上は少し考えてからこう答えた。
「内・外野を守れて足も使えるので、ユーティリティーに起用に応えられるつもりです。バッティングは率と長打力のどちらもあって、打球の速さが持ち味だと思うので。吉田正尚選手(レッドソックス)のような選手を目指しています」
三度目の正直はなるか。その答えは10月26日に出る。
『下剋上球児〜三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』
菊地高弘著(発行/カンゼン)
【発行】カンゼン
【定価】本体1500円+税
2018年夏の甲子園で注目を集めたのは、初出場の三重県立白山高校だった。
白山高校は、いわゆる野球エリート校とは対照的なチーム。
10年連続県大会初戦敗退の弱小校。
「リアル・ルーキーズ」のキャッチフレーズ......。
そんな白山高校がなぜ甲子園に出場できたのか。
そこにはいくつものミラクルと信じられない物語が存在した。
「菊地選手」渾身の一作。
学校も野球も地元も熱狂! ひと夏の青春ノンフィクション
【目次】
第1章 雑草だらけのグラウンド
第2章 牛歩のごとく進まぬチーム
第3章 10年連続三重大会初戦敗退
第4章 真面目軍団と問題児軍団
第5章 一筋の光明と強豪の壁
第6章 8名の野球部顧問
第7章 過疎の町と野球部
第8章 三度目の正直
第9章 監督の手を離れるとき
第10章 日本一の下剋上
第11章 空に昇っていく大歓声
第12章 白山はなぜ甲子園に出られたのか
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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