高校野球のタイブレークは先攻、後攻、どっちが有利? 経験監督に聞く「勝利のポイント」 (5ページ目)
では、なぜそうなってしまったのか。それは投手の打力に理由がある。上田西は9回裏に二死二塁とサヨナラのチャンスを迎えたが、8番の捕手・岩下俊輔が申告敬遠され、9番の投手・服部朔也に回った。6回から救援し、4イニングを無失点と好投していた服部だったが、吉崎琢朗監督は代打・小林遼太郎を送った。
「敬遠はされるかもと思っていました。正直、ピッチャーの打力が劣る(長野大会で5打数0安打3三振)ので、勝負どころでしたし、勝負をかけました。滝沢(一樹)も信用しているピッチャーなので」
結果的に小林は三振。甲子園初登板を開幕戦のタイブレークの状況で迎えた滝沢は、5連打を含む6安打を浴びて6失点した。
明豊もタイブレークの10回表一死一、二塁の場面でこの夏4打数0安打の投手・森山塁に代えて芦内を起用。芦内は見事ライト前タイムリーヒットで期待に応えたが、その裏、初登板の野田皇志が踏ん張れず逆転を許した。
7回途中から救援登板した森山は3回4安打5四死球3失点と乱調だったため交代はやむをえないが、甲子園初マウンドがタイブレークというのはやはり投手にとっては重圧が何倍にもなる。
土浦日大や北海のようにほかのポジション(両チームともファースト)に回していたエースを再登板させるなど、すでにその試合で投げていて雰囲気がわかっている投手を残しておくのが得策かもしれない。
上田西、明豊と同様におかやま山陽もタイブレークとなった10回に井川駿をマウンドに送ったが、こちらは初戦で甲子園のマウンドを経験している。さらに、堤監督は井川起用に自信を持っていた。
「あの子は、ピンチになればなるほどエネルギーを出せる珍しい投手。春の県大会の創志学園戦でもタイブレークから投げて勝ってるんです」
春の県大会準々決勝・創志学園戦。井川はタイブレークとなった10回に「ピンチに強い自分がいく」と志願して登板。2イニングを無失点に抑えている。
ピンチに動じない性格。さらには公式戦で強豪相手に勝った経験。不安なく送り出せる根拠がそろっていた。
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