甲子園出場を逃した13人の逸材 世代ナンバーワンの大阪桐蔭・前田悠伍も決勝で涙
8月6日から第105回全国高校野球選手権記念大会が開幕する。佐々木麟太郎(花巻東)と真鍋慧(広陵)の二大巨頭に代表されるように野手に好素材が揃う一方、めぼしい投手は地方大会で敗退してしまった印象が強い。
今夏は残念ながら聖地を踏めなかった選手のなかから、とくに潜在能力の高い逸材をピックアップしていこう。
大阪大会決勝で履正社に敗れ、甲子園を逃した大阪桐蔭のエース・前田悠伍この記事に関連する写真を見る
【まさかあの前田悠伍が...】
まずは世代ナンバーワン投手の呼び声の高かった前田悠伍(大阪桐蔭)だ。高校1年秋の衝撃デビュー時には「向こう2年、甲子園は前田の時代がくる」と予感させたものだが、まさか高校最後の夏に甲子園に進めないとは想像できなかった。
高校生投手として、これほど勝てる要素を持った存在も珍しい。球速表示は140キロ前後でも、スピード感がほかの投手とまるで違う。弾力性のあるゴムまりがビヨーンと伸びてくるように、捕手のミットを突き上げる。スライダー、チェンジアップなどの変化球も一級品で、ピンチを迎えても動じないマウンドでの佇まいや相手打者の顔色を見ながら投げられるクレバーさも併せ持つ。
だが、今春のセンバツ以降は登板機会が極端に減り、故障説もささやかれた。今夏は大会中に左手親指の皮がめくれ、わずか2試合の登板。履正社との決勝戦ではバックの拙守もあり、8回3失点(自責点2)と不本意な内容だった。
とはいえ、体調さえ万全なら夏の甲子園終了後に開催されるU−18ワールドカップの代表に選出される可能性は高い。国際舞台で野球ファンを「さすが前田」とうならせ、秋のドラフト会議を迎えてほしいものだ。
同じく左投手では、東松快征(とうまつ・かいせい/享栄)、武田陸玖(たけだ・りく/山形中央)も甲子園まで肉薄しながら届かなかった。
東松は凄まじい馬力を生かし、最速152キロの剛球を投げ込む。今春のU−18代表強化合宿では貪欲に前田にアドバイスを求め、ストレートと同じ腕の振りで変化球を投げる術を学んでいる。大藤敏行監督のもと、充実した戦力を揃えて28年ぶりの甲子園を目指した今夏は愛知大会準々決勝で敗退。東松は先発しながら愛工大名電打線につかまり、2回を持たず7失点で降板している。多くのスカウト陣の前で見せた乱調が、ドラフトにどんな影響を及ぼすのか。素材としてまだ底を見せていないだけに、大化けできる環境に進むことを祈りたい。
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著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。