仙台育英の最速右腕・湯田統真が153キロに到達した方法 つかんだ理想のバランス感覚 (3ページ目)

  • 田口元義●文・写真 text & photo by Taguchi Genki

【昨年夏の甲子園では防御率6.35】

 須江の認識だと、飛躍の時期は昨年の5月あたりからだという。ストレートが140キロに到達し、スライダーの球速がアベレージで130キロを超えるようになり、「夏に戦力として期待できる」と睨んだ。

 その一方で、コントロールが安定しないなど、まだ粗削りな側面もあった。「140キロクインテット」の一角として日本一を経験しながらも、3試合5回2/3を投げて防御率が5人のうち最低の6.35という数字もそのひとつであり、湯田自身も「全然ダメなピッチングでした」と反省を真っ先に挙げる。

 夏の甲子園、そして新チームとなった秋を通じて、ピッチングをロジカルに分析する。ひとつたどり着いた答えが「どこで力を加えればボールの出力を高められるのか?」だった。

 湯田が着目したのはメディシンボールを使ったトレーニングだった。3キロのボールを両腕で真上に放り上げる。目一杯の力を使えば10メートルほどの高さには届くが、それを「無駄な力を省きながら投げるためにはどうすればいいか?」と考えながら、シーズンオフにひたすらその練習を繰り返した。

「『ウォラ!』って思いっきり投げる150キロってそんな速く見えなかったりするじゃないですか。そういうことも意識しながらやっていたら、ある日、つかんだんですよね。『このタイミングと力の出し具合だ』って」

 湯田によると、左足を踏み出す際の力の抜き具合と、上半身を回転させて腕を振る時の力の入れ具合が大事になるという。このバランスが、湯田にとって理想的な感覚になった。このメディシンボールのトレーニングは肉体の安定という副産物を生み出し、継続的に行なっていたウエイトトレーニングとの相乗効果もあって、秋まで83、84キロを推移していた体重も88キロまで増えた。

 身長は180センチ。監督の須江も認める身体能力の高さに依存することなくロジカルに肉体を鍛え、ピッチングをバージョンアップさせた。その結果が"最速153キロ"のストレートであり、140キロ超のスライダーだ。

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