衝撃の甲子園デビューから1年「こういう選手がいるチームは強い」を体現する男。横浜・緒方漣を支える反骨心と図太さ (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 4対2で勝利した試合後、首元から足までユニホームを泥だらけにして緒方は試合を振り返った。

「自分はチームに勢いを与える打撃をして、起爆剤になれたらと考えています。今日は3出塁できたので、自分の仕事はできたかなと思います」

出塁率は驚異の6割超え

 横浜の村田監督は、この1年の緒方の成長についてこう語る。

「体も心も鍛え直して、体重は1年で8〜9キロ増やして甲子園に戻ってきました。パワーで負けず、かつ俊敏に動ける、選手としてレベルアップしてくれました」

 冬場にはバリエーション豊富なティーバッティングのドリルを通して、打撃のレベルアップに取り組んだという。

「拾う、たたむ、叩く、伸ばすの4項目を身につけることで、相手の決め球を粘れるようになったり、ヒットにできるようになったりしました」 

 緒方の打撃はより嫌らしさに磨きがかかっている。特筆すべきは出塁率の高さだ。1年夏も2年夏も緒方は神奈川大会で.625という驚異的な出塁率をマークしている。ただ安打を量産するだけでなく、四死球で出塁ケースも多い。

 2番を打つ板倉寛多は、打席に入ると6割の確率で緒方が塁上にいる計算になる。板倉は緒方についてこう語った。

「どんなボールに対しても食らいついてヒットにしたり、粘ってフォアボールをとったり、出塁する執念がすごいです」

 板倉の口から「執念」というフレーズが出たが、これは奇しくも緒方のモットーでもある。緒方は言う。

「泥臭く、がむしゃらにプレーするのが小さい頃から自分のあるべき姿だと考えていました。今日はユニホームをいっぱい汚せて、執念のあるプレーができたと思います」

 体格的に恵まれているわけではない。50メートル走のタイムは6秒3、遠投距離は95メートルと身体能力が突出しているわけでもない。それでも、緒方がグラウンドに立つとこれだけ輝けるのはなぜなのか。そんな疑問を本人にぶつけてみると、緒方は真っすぐにこちらを見てこう答えた。

「中学(オセアン横浜ヤング)時代の恩師の上野(貴士/元横浜高ほか監督)さんから『デカいやつには絶対負けるな』と言われていたんです。それからは大きな選手とか、馬力のある選手には絶対負けないという思いでやっています」

 強烈な反骨心と、大舞台に怯まない図太さ。これから戦うステージが高くなっても、緒方漣は緒方漣であり続ける。そんな予感がする。

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