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履正社の名将が母校・東洋大姫路の監督へ。総工費1億4千万円の室内練習場完成で「全国で勝てるチーム」を目指す (4ページ目)

  • 谷上史朗●文・写真 text & photo by Tanigami Shiro

 履正社時代、ひと際力を入れ、実践してきたのが"考える野球"だった。普段から細かくケース設定した練習を繰り返し、冬の間も頻繁に紅白戦を行なった。さらに打席の選手たちにサインを出させるなど、徹底して頭を鍛えた。その結果、岡田の狙いや意図を理解してプレーする選手が増えていった。

 2019年夏に日本一になったあとは『教えすぎない教え』(竹書房)というタイトルの書籍を出版したが、「今は教えすぎるくらい教えている段階。まだまだです」と笑った。取材日もたっぷりと時間をかけてケース練習が続いた。

「今の打球でいつまで見てんねん! どこで判断したらもうひとついけるか考えてくれよ」

「ホームランも1点やし、このケースは内野ゴロでも1点や。誰もホームランを打ってくれとは言わへん。点をとるための意識をしっかり持って振ってくれ」

「ゴロゴーの場面でセンターラインの打球はいらん。何回言わすんや! ピッチャー抜けてセカンドゴロになりました......の結果オーライじゃあかんねん」

 この日、絶えることなく響いていた岡田の声が、どこまで選手に浸透していくのか。

「兵庫は甲子園の可能性を感じるチームが多いですし、大阪より公立校が絡んでくる確率も高い。大阪より中学の軟式野球が盛んで、好投手が育ってくるのも理由のひとつだと思いますけど、こんなところにこんなピッチャーがいたのか......というイメージがあります。そのあたりも含め、夏は打たないと勝てない。攻撃陣が頭をしっかり使って、どれだけ点をとっていけるかです」

 兵庫には大阪桐蔭はいませんねと向けると、「それはいない方がいいです」と小さく笑い、こうつづけた。

「ただ頭にあるのは、兵庫で勝つことより、どうやって甲子園で勝てるチームをつくるか。履正社の35年でやってきたことを、ここからどれだけ短縮してできるか。まずはこの夏です」

 あの熱狂を再び──。東洋大姫路の監督としては初めての、岡田龍生とすれば43年ぶりとなる兵庫の夏。初戦は7月12日、10時から姫路球場で灘高校と対戦する。

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