元日本ハム芝草宇宙もほれ込む逸材。帝京長岡の145キロ右腕は歴史を動かせるか (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 日本ハムで関西地区担当スカウトを務めた芝草監督に、聞いてみたかったことがある。「スカウト・芝草宇宙なら茨木くんを獲りますか?」と。芝草監督は笑みを浮かべ、こう答えた。

「手足が長くて、身体能力が高い。何をやらせても一級品ですから。僕がスカウトなら、素材を評価して獲りたいですね。大きく化ける可能性は十分にありますから」

 そして、芝草監督はこう続けた。

「ドラフトにかかる選手になるには、甲子園に出ることが近道になる。だから必ず行かせてやりたいんですよ」

 芝草監督自身、1987年夏の甲子園でノーヒット・ノーランを達成している。甲子園で自分の野球人生が拓けた実感がある。

「甲子園が僕を育ててくれたと言っても過言ではありません。選手たちにもよく言うんです。『甲子園に行くと別の力が出るぞ。最高の場所だから目指そう』って。人生が変わる経験をさせてやりたいんです」

 高校時代の恩師である前田三夫さんからは、「戦う意志」を学んできた。やり方は違えど、選手に叩き込む魂は変わらない。

「闘争心がなければ、勝つための行動に移せません。今の3年生にはずっと言ってきていますが、彼らが後輩たちに伝える姿を見て、だいぶ成長してきたなと感じますね」

 近年の新潟の高校野球は群雄割拠を極めている。ドラフト上位候補の田中晴也を擁する日本文理だけでなく、甲子園に出ても不思議ではない強豪がひしめく。帝京長岡にもチャンスは十分にある。

 茨木の胸のすくストレートが1球でも多く低めに突き刺されば、歴史は動く。今年の新潟は面白いことが起きそうだ。

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