ルパンのように技術を盗み、カメレオンのように擬態する男・大阪経済大の151キロ右腕は「カッコええ」プロを目指す (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 たしかに品行方正な、今どきのプロ野球選手の匂いはしない。かといって、才木はチームの輪を乱すようなタイプではなく、周囲から慕われる愛嬌がある。そして、その内面からは強烈な負けん気と生命力がにじみ出る。

 ルパンのように技術を盗み、カメレオンのように擬態する。だが、いざ公式戦のマウンドに立てばチームの勝利のために全力を尽くす。それが才木海翔という投手だ。関西六大学リーグには大阪商業大、龍谷大、京都産業大といった強敵が立ちはだかるが、才木は「背番号18の責任を果たしたい」と意気込む。

 今年の大阪経済大は才木だけでなく、強肩捕手の山本健太朗(明石商)もドラフト候補に名を連ねる。さらに投手陣には昨季にわかさスタジアム京都で最速157キロを計測した津田淳哉(3年・高田商)、高校時代から注目され完成度の高い林翔大(2年・乙訓)ら好投手がひしめく。2007年春以来の優勝を狙える布陣が整いつつある。

 インタビュー後に開幕したリーグ戦で大阪経済大は開幕3連敗と出遅れたものの、強豪・龍谷大相手に連勝して勝ち点を獲得。巻き返しが期待される。

オリックス吉田正尚を併殺打

 勝負の年になり、才木は「無限の可能性」をテーマに取り組んでいるという。きっかけは、京都産業大から日本ハムにドラフト8位で入団した北山亘基の存在だった。

「プロに入ってからの北山さんを見て、『は? この2〜3カ月で何があったんや』と思うくらい変わっていてビックリしました。156キロなんて見たことなかったですから。人間には無限の可能性があるんやって、北山さんがわからせてくれました」

 才木自身も、プロのレベルを肌で感じ始めている。3月には阪神やオリックスの二軍とのオープン戦を経験。オリックス戦では二軍調整中だった吉田正尚と対戦し、併殺打に打ち取っている。

 吉田を打席に迎えた時、どんなことを感じたのか。そう聞くと、才木は目を輝かせてこう答えた。

「圧はすごいし、とにかく格好よかったです。カッコええ......テレビの人や......そんな人に俺投げとるんや......って感じながら投げてました」

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