大阪桐蔭・前田悠伍は入学後負けなしの救世主。「打たれるわけがない、という気持ちは持っている」 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Taguchi Yukihito

 前田に自身のピッチングの持ち味について聞くと、多くを語ってくるのは内面についてだ。

「『オレのボールは打たれない』とか、そんな変な自信は持ってないですけど、『打たれるわけがない』という気持ちは誰よりも持っています。気持ちの部分が、自分の一番の持ち味だと思っています」

 子どもの頃から、普段の遊びでも勝つまでやめず、女房役の松尾が「ちょっと打たれたらマウンドでカッカして、ずっと怒っています(笑)」と言うほどの負けず嫌い。

 その一方で、クレバーな一面も備える。

「マウンドで常に頭にあるのは、今日のベストを出しきること。調子が悪ければ悪いなりに、その日のベストを出す。試合を任されている以上、そこが大事だと思っています」

変化球で三振は好きじゃない

 昨年の秋、前田に「高校に入ってから負けたことがあるか?」と聞いた。すると、練習試合を含め負けたことがないと。コロナ禍により練習試合は多くないが、それでも負けないということは只者ではない。その話を聞くと、無性に負ける姿を見たくなった。もちろん、滅多なことでは負けないだろうと感じたからだが、負けを経験することでさらにスケールアップするのではないか......という期待が強かったからだ。

 今年1月、前田に「負けるところも見たかった」と伝えると、笑顔でこう返してきた。

「たしかに負けて学ぶこともあると思うんですけど、大阪、近畿を勝ったからこそ神宮大会を経験することができた。神宮で戦った3チームのバッターは、それまでの相手より体格が違いましたし、スイングも強くて、当てにくるような選手はいなかった。全国レベルを1年秋の段階で経験できたのは負けなかったからです」

 前田が言う全国レベルの強打者のなかには、同じ1年生(新2年生)スラッガーが揃う。

「広陵の真鍋(慧)くんと九州国際大付の佐倉(侠史朗)くんは神宮で対戦して、ふたりとも打たれましたけど、とにかく大きくて、打席でオーラがありました。これで佐々木くんが打席に立ったら、どう感じるんだろうとは思いました」

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