中学2年で単身野球留学から波乱万丈の現役生活。IMGアカデミー出身の独協大4年生がジャイアンツの通訳になるまで
獨協大硬式野球部に所属していた前田悠也は、27歳まで続いた波瀾万丈の現役生活を終え、来年から読売巨人軍の通訳として、チームを縁の下から支える仕事に就く。
来年から巨人の通訳として働く獨協大の前田悠也この記事に関連する写真を見る
【中学2年で単身渡米を決意】
獨協大の選手名簿の出身校の欄でひときわ目立つ「IMG Academy」(以下、IMGアカデミー)の文字。1994年に新聞記者の父と通訳の母との間に生まれた前田は、野球好きの両親の影響で幼い頃からプロ野球やMLBの中継を見て育ち、自然と白球を追うようになっていた。
そこまではどこにでもいる野球少年だったが、中学2年の時にアメリカ留学を決断する。
「松井秀喜さんに憧れていましたし、純粋に野球の本場であるアメリカで野球をやりたくなりました。留学経験のある両親の英語力と人脈をフル稼働してもらって、当時の僕の学力や英語力でも入れるような学校に行かせてもらいました」
渡米して最初の1週間はホームシックになったというが、前田には野球があった。野球を通じてコミュニケーションを図ると、中学校の野球部に溶け込むのにそう時間はかからなかった。
その後いくつかの学校を経て、IMGアカデミーの門を叩くことになる。錦織圭もOBのひとりであるIMGアカデミーは、もともとはテニススクールだったが、今では教育機関としての機能を持ち、さまざまな競技の選手が世界中から集まっている。
日本にいた時は、小学生時代に渋谷区選抜に選ばれた程度だったが、アメリカの環境が前田の急成長を促した。
「アメリカに行って、まず食事が変わって体が大きくなりました。また、アメリカのピッチングコーチは投げすぎることを戒める傾向があるので、体にかかる負担を抑えて、のびのびとできたこともよかったのかもしれません」
IMGアカデミーはフロリダの温暖な気候に加え、最先端のトレーニング施設と理論が揃う。そんな充実の環境でグングンと力を伸ばし、在学時には90マイル(約144〜145キロ)を記録するまでになった。
メジャーリーガーへの夢も膨らんできた前田は、チームの伸びしろと自身の出場機会を考え、短大のPatrick Henry Community Collegeに進学した。
1 / 4