中学2年で単身野球留学から波乱万丈の現役生活。IMGアカデミー出身の独協大4年生がジャイアンツの通訳になるまで (2ページ目)
【選手生命を脅かすアクシデント】
しかし、入学直後に悲劇は起こった。
「ブルペンで投げていて大暴投したのですが、ボールと一緒に右肩も飛んでいってしまったかのような感覚で......」
すぐ病院に行くと、「右肩関節唇の断裂」と診断された。「このままでは野球はおろか、日常生活にも支障をきたす」と言われ、手術することになった。
「90マイルを記録したことで『もう1つ上の段階に行きたい』と思い、無理して練習した結果、肩が悲鳴をあげました。肩がグラグラする感覚は以前からあったのですが、ここまで急激に悪化するのかと驚きました」
当初はPatrick Henry Community Collegeでプレーしたあと、4年制の大学に編入しようと考えていたが、ケガで投げられない投手を獲る大学はなかった。そこで前田は2つの選択肢で悩むことになる。
1つは野球をあきらめて、アメリカの4年制の大学に編入すること。もう1つは日本の大学に入学し、「スポーツ推薦者のみ」などの条件がなく、誰でも入部できる硬式野球部でプレーすること。そして前田は後者を選んだ。
「長期的に見て、なにがプラスになるのかをひたすら考えました。アメリカに残るのか、日本で最後まで野球をやりきるか......本当に悩みました。でも、まだ選手への未練があり『いま野球をやめたら一生後悔する』という気持ちが最終的に勝りました」
こうして首都大学2部リーグに所属する獨協大に入学することになった。
獨協大野球部は、スポーツ推薦制度はなく、指定校推薦や一般入試を合格した選手たちのみで構成されているが、1部リーグで戦った経験もあり、また昨年のドラフトでは並木秀尊がヤクルトに指名されるなど、文武両道のチームとして注目を集めている。そこで前田は23歳の新入生として新たなスタートをきった。
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