「世代最強左腕」となるか。夏の甲子園でも活躍した京都国際・森下瑠大が進化中

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

── 春の成長次第では、ドラフト上位指名もあるのではないですか?

 率直に尋ねると、京都国際の小牧憲継監督は「僕は今まで野手しかプロに送っていないので基準がわかりませんが」と前置きしつつ、こう答えた。

「森下も『ドラフト上位でプロに行きたい』と言っていますし、勝てるピッチャーとして評価いただけるなら可能性はあると思います」

 現時点では最速143キロと、目を引く数字があるわけではない。だが、森下瑠大(りゅうだい)というサウスポーの価値は、スピードガンの数字だけでは測れない。

今年夏の甲子園でチーム初のベスト4の立役者となった京都国際のエース・森下瑠大今年夏の甲子園でチーム初のベスト4の立役者となった京都国際のエース・森下瑠大この記事に関連する写真を見る【春と夏の甲子園で印象がガラリと変わった理由】

 春と夏の甲子園を見比べて、印象がガラリと変わる選手がいる。

 今年なら智辯学園の前川右京(阪神4位)。そして京都国際の2年生エース・森下が双璧だった。

 減量の影響で動きにキレが出て、打撃フォームに迷いがなくなった前川。そして森下は球速が5キロほど上がっただけでなく、捕手のミットに向かって加速するような強烈なキレが加わっていた。

 森下の進化が気になった人間は筆者だけではなかったようで、何人もの関係者が小牧監督に「何があったんですか?」と聞いたという。小牧監督は「春のセンバツで負けた悔しさも大きかったでしょうが」と言いつつ、こんな事情を打ち明けた。

「一番大きかったのは、疲労骨折が完全に治ったことやと思います」

 森下は昨秋、右脛の疲労骨折を負っていた。冬場は治療にあて、春のセンバツではまだ本調子とはいかなかった。6月くらいから本格的に状態が上向いてきた。それでも、と小牧監督は続ける言う。

「夏も京都大会初戦の3日前に捻挫したので、『この夏は勝つピッチングに徹しよう』と割りきったんです。軽く投げても135キロくらい出て、ホームベース上で強いボールなら打たれないとわかってよかったんじゃないですか」

 つまり、甲子園ベスト4に導いた夏の快投にしても森下の「全開」ではなかったのだ。一方の本人は、進化の要因について「普段のキャッチボール」を挙げる。

「軽く投げていても、常に指先感覚を大事にしています。指先でボールを押し込む感覚がよくなってきたので、春から夏にかけてスピードやキレが出てきました」

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