東海NEXUS監督が語る「球女」たちのリアル。プロは消滅でも高校の女子野球部は増加 (3ページ目)

  • 森大樹●文・撮影 text & photo by Mori Daiki

 碇監督曰く、必ずしも元プロの選手が優れているわけではない。確かに経験豊富な選手のほうが野球を知っている。しかし、それゆえに驕りが生まれ、マインドの部分が欠けてしまうことがあった。ようやく最近になってチーム全体にマインドを大切にする空気ができてきた手応えを感じている。

「本当の意味での強さを示すことがネクサスを作った目的なので、妥協するつもりはないです。このステップを飛ばすことは絶対にやりたくなくて、できなければ次には進みません。全力でやる意味が伝わらないところがあった時は、自分の伝え方が悪いということだと思うので、どうやったらいいのかを毎日考えながらやっています」

 東海NEXUSに所属する監督と選手は、平日は一般企業に勤務する。就職先はチーム活動に理解がある企業で、愛知ディオーネをスポンサードしていたところも多い。今季入団の菰田晴香選手が勤める名古屋食糧もそのひとつで、社長が野球好きで応援してくれているという。

 一方、碇監督を含めた4人が勤務するJR貨物は、東海NEXUS発足から新たに支援を始めた。きっかけは、会社主催のイベントにアスリートゲストとして招かれたことだった。碇監督は事故を未然に防ぐ部署に勤務し、会社に新しい風を吹かせる役割を期待されているという。

「本気でやるラジオ体操を導入してコンテストを開催したり、体力をつけて熱中症を予防するために筋トレ動画を作って支社に一斉に流したり、楽しく労働災害撲滅を目指しています。

 野球をやってきたからか、分析が好きなんですよね。僕は『ヒヤリ・ハット』を集約する係なんですけど、それをまとめる長年使われてきた用紙のフォーマットを変え、項目を追加して、分析に活かしています。その結果、より効果的な対策を見つけ出すことができれば、事故を未然に防げるのではないかと考えています」

 安全第一、健康第一が重要な仕事場において、実にアスリートらしい発想力でその実現に貢献している。野球におけるデータ分析を仕事にも活かせているのは、碇監督が現役時代キャッチャーであり、指導者という立場でもあるからなのかもしれない。

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