大阪桐蔭ナインに「悪役」のレッテル。夏の大阪初制覇も前代未聞の事態になりそうだった
大阪桐蔭が史上初となる同一校による2度目の春夏連覇を達成した2018年の夏。2番打者の青地斗舞は自らの役割についてこう話していた。
「1番の宮崎(仁斗)と『クリーンアップにいい形で回そう』みたいな話はいつもしていました。1、2番が出れば大量得点になるケースも多いんで......2番の僕だったら、ただ単にバントで送るんじゃなくて、状況を見ながらつなぎのバッティングをしたり、積極的に攻撃参加することを意識していました」
青地は2番打者として春夏通算、全11試合に出場して46打数18安打(打率.391)と好成績を収めた。この2018年の大阪桐蔭は3番・中川卓也、4番・藤原恭大、5番・根尾昂の超強力クリーンアップに注目が集まったが、青地や宮崎といった"脇役"たちの貢献度も大きかった。
1991年夏、決勝で近大付を破り初めて大阪大会を制した大阪桐蔭ナイン 大阪桐蔭打線の強固さは、初めて甲子園に出場した1991年から変わらず受け継がれている。当時の主将・玉山雅一が言う。
「僕らの代の時も、中学時代はクリーンアップを打っていた連中が揃っていましたけど、そんな彼らが高校で8番を打っても役割はわかっていましたよ。『オレは中学まで4番やった』とか、そんなプライドをいつまでも持ち続けていたらチームは勝てないですよ」
参考までに付け加えれば、1991年の大阪桐蔭でおもに8番を任されていたのがサードの足立昌亮だった。足立は中学時代、奈良の強豪・郡山シニアで5番を打つほどの選手だったが、大阪桐蔭では下位打線。足立は自らを「脇役」だったと語る。
「"脇役"って思いたくはないけど、ならざるを得ないチームでしたから。井上や萩原......あのエリートたちの力をまざまざと見せつけられたら、『自分にできることをやらないと、試合に勝てない』って思いますよ」
足立が一目置く井上大と萩原誠だが、本人たちにエリート意識はなく、それどころか自分たちを追い込むように黙々と練習に励んでいた。そんな姿もまた、彼らをより神格化させたのかもしれない。
「井上と萩原まで回せば勝てる」
これが大阪桐蔭ナインの共通認識となっていった。
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