無名左腕が成り上がりでドラフト候補に。スカウトたちは最速149キロ左腕の成長を絶賛 (2ページ目)
特筆すべきはコントロールだ。最速149キロのストレートに、スライダー、チェンジアップ、フォーク、ツーシームといった変化球を織り交ぜる。「スピードよりもしっかりと力を制御することを意識しています」との言葉どおり、どの球種でも狙ったコースに決めることができるのが、桐敷の最大の魅力だ。
ピンチでも動じることなく、「走者を出しても粘り強く投球できるようになったところが成長だと思います」と、桐敷は言う。
佐藤和也監督(現・総監督)のあとを継いで昨年から指揮を執る鵜瀬亮一監督も「勝負どころで置きにいく投球をしなくなりました」と、その成長に目を細める。
最終学年にして完成度を高めている桐敷だが、目標とする全日本大学野球選手権初出場に向けてイバラの道を歩んでいる。それが新型コロナウイルスという見えない敵との戦いだ。
大学側の対策が厳しく、なかなか県外遠征が許されず、桐敷が今季リーグ戦の前に登板したのはわずか3試合。その後、対外試合は解禁となったがリーグ戦をはじめ県外遠征から新潟に帰るとPCR検査を受けることが義務づけられており、リーグ戦期間中は検査日の月曜日と結果を待つ火曜日は練習ができない。
◆偏差値72の福岡高校で最速149キロ。プロ注目の右腕は東大より狭き門を目指す>>
「思う存分、野球を楽しめる状況にないのが正直なところです」
そう語る桐敷だが、一方で野球ができる幸せを感じているのも間違いない。鵜瀬監督は部活動の意義を強調する。
「大人は経済を止められるのは苦しいことですが、学生にとっては教育を止められることは本当に辛いことだと思います。大学の授業もずっとオンラインなので、五感を感じられるのは部活くらい。今は部活が教育の柱です」
その五感をみんなで共有したいという気持ちを、桐敷は誰よりも持っている。開幕戦を観戦に訪れた本庄東の田中和彦監督に、桐敷は前日メールを送っている。そこにはチームメイトと優勝したという旨の熱い言葉に溢れていたという。
「律儀ですし、性格も真っすぐな子です」
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