広島・大道温貴の目の前で快挙。北東北大学リーグに注目の本格派右腕がいる (2ページ目)
高校でも野球は続けたが、入学時の球速は130キロに満たなかった。当時は、プロはもちろん、大学で野球を続けるなんて想像もしていなかった。そんな中村に、母はひとつだけ注文をつけた。
「野球をやるなら、最後までやり切りなさい」
もともと、野球をすることに母は反対だったが、それでも始めたからには中途半端な形でやめることだけは許さなかった。その思いに応えるように、中村も懸命に野球に取り組んだ。
ウエイトに励み、さらには大臀筋を意識した階段ダッシュ、1日3キロのランニング......すると高校2年で球速は140キロを超え、県内でも指折りの速球派右腕に成長した。わずかではあったが、次のステップが見えるようになっていた。
しかし、高校3年の夏。希望した社会人企業チームのセレクションに不合格となり、一度は野球をあきらめかけた。そんな失意の中村に声をかけたのが、ノースアジア大学だった。
「大学に行く予定はなかったんですが、母も『やる気があるならいいよ』って」
そんな母の期待に応えるように、中村は入学早々、頭角を現す。6月に東北地区大学野球選手権で東北学院大を相手に3安打1失点の完投勝利。
その秋のリーグ戦では5試合に登板して4勝0敗。佐々木健(富士大→NTT東日本→西武)、高橋優貴(八戸学院大→巨人)、大道といった、のちにプロに進む投手たちを抑えて最優秀防御率賞(1.42)のタイトルを獲得した。その後も順調に成長を続け、球速は最速147キロまで達するなど、名実ともに北東北を代表する投手となっていった。
それでも中村自身、まだプロの域に達しているとは思っていないという。
「(同連盟からプロ入りした大道やソフトバンク・中道佑哉の)ピッチングを見ても、本当にレベルが違うなと感じました。ただ、自分はあと1年あるので、秋までにあのくらいまでいけたらいいなと思ってやっています」
大学最後のシーズンは、アベレージで140キロ台後半、そして150キロ超えが目標だ。
「昨年は試合のなかで安定感を出すことができなかったので、練習でやってきたことを試合でも安定して出せるように。真っすぐの質、球速ともにもっと上げていかなきゃいけないですし......本当にこれからだと思っています」
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