周東2世、変則右腕...社会人野球で輝きを放つ3人の個性派 (2ページ目)
秋田を本拠にするTDKはスポニチ大会が今年に入って初の対外試合。さらに鈴木は大会前に腰を痛めるアクシデントもあり、調整不足の状態だった。3月10日のHonda戦に先発した鈴木は、5回2/3を投げ、被安打6、奪三振6、与四球4、失点4(自責3)の内容で敗戦投手になった。
「苦手にしていた部分が顕著に出ました」
登板後、鈴木は自身の投球を振り返った。鈴木の言う「苦手」とは、セットポジションでの投球である。ランナーが出塁すると、あからさまに球速が落ちてしまう。大きく反動をつける変則ワインドアップが使えず、小さなアクションで出力する難しさがあるためだ。鈴木は「去年の都市対抗からの課題にしていたんですけど、まだ形になっていなかった」と語った。
「右の股関節に乗るのが苦手なので、うまく乗るためのトレーニングをやっています。まだ積み重ねができていないので、重点的にやっていきます」
明確な課題こそあるものの、初見の打者を驚かせる変則フォームから放たれる快速球とスライダー、チェンジアップはレベルが高い。もし、今後プロ入りが実現すれば大きな話題を呼ぶに違いない。
なお、鈴木本人も自分のフォームが変わっているという自覚はあるそうだ。
「変なフォームだなと思っていますよ。でも、投げやすいので変えるつもりはありません。むしろ自分の個性として、前向きにとらえたいです」
最速152キロの大型左腕、三菱自動車岡崎の坂巻拳 プロでも希少価値のある左腕として注目したいのは、三菱自動車岡崎の坂巻拳(げん)である。187センチ、94キロの大型サウスポーで、最速152キロ。昨年もドラフト候補に挙がりながら、指名漏れに終わっている。
3月11日、TDK戦で坂巻が先発マウンドに立つと、神宮球場のバックネット裏に陣取るスカウトたちが色めきたった。しかも、名スカウトと名高い複数のベテランスカウトが前列に移動し、食い入るように投球を見つめていた。
球速は常時140キロ台前半ながら、打者が差し込まれるケースが目立った。速球で空振りを奪えて、右打者も左打者もまんべんなく打ち取れる。打線の援護がなく敗戦投手になったものの、7回を投げて被安打4、奪三振6、与四球3、失点1の好投を披露した。
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