周東2世、変則右腕...社会人野球で輝きを放つ3人の個性派
社会人野球からプロの世界に飛び込むのは容易ではない。とくに近年は三軍制を採用する球団が増えるなど、どの球団も育成環境に力を入れている。必然的にドラフト会議で指名する選手は若い素材型が中心になり、年齢の高い社会人選手は即戦力になるだけの実力がなければ指名されにくくなっている。
とくに野手はその傾向が顕著で、源田壮亮(トヨタ自動車→西武)、近本光司(大阪ガス→阪神)、小深田大翔(大阪ガス→楽天)と成功例はありながら全体の指名数は限られている。プロを目指す社会人選手にとっては、厳しい時代と言えるだろう。
今春の3月9日から4日間にわたり開催されたJABA東京スポニチ大会は、無観客試合ながら多くのNPBスカウトが視察に訪れた。守護神として優勝に導き、大会MVPに輝いた剛腕・廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)が最注目の存在だったが、ほかにもユニークな個性を発揮した選手もいた。そこでスポニチ大会で目立った3人の個性派選手を紹介したい。
独特のフォームから最速154キロのストレートを投げ込むTDKの鈴木大貴 もし有観客であれば間違いなくSNSを賑わしていたであろうユニークな投手が、TDKの鈴木大貴である。新人だった昨年の都市対抗では最速154キロを計測して、一躍今年のドラフト候補に浮上した右腕だ。
その変則投法は、見る者に強烈なインパクトを植えつける。両腕を大きく振りかぶって背中をも反らし、両ヒザのクッションを使って反動をつける。両腕をグルンとダイナミックに回して右足一本で立つと、横手に近いスリークオーターから力強く腕を振る。歴史上、こんな独特なアクションとリズムで投げ込んだ投手がいただろうか......と考え込んでしまうフォームである。
どうしてこの投げ方に行き着いたのか? と思わずにはいられないが、本人によると「正直言って覚えていないんですけど、大学4年春にはこんなフォームでした」と原型ができていた。
流通経済大ではおもにリリーフで登板しており、全国的な知名度はなかった。TDKの佐藤康典監督が「スライダーがふくらまず、ストレートの軌道から変化するのが面白い」と評価して、採用が決定。TDK入社後に球速が大きく伸び、エース・小木田敦也と二枚看板を張るほどに急成長した。
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