九州に今永昇太を彷彿とさせる左腕。早くも来季ドラフト上位候補と評判 (2ページ目)
西日本工業大は日本文理大と同じ北部九州ブロックに所属する。OBの武田啓監督は北大津(滋賀)の高校時代、赴任したばかりの宮崎裕也監督(現・彦根総合高校監督)の猛練習に耐え、「部員1人」の時期を乗り越えた伝説の部員として知られている。北大津はその後、宮崎監督によって黄金時代を迎えたが、武田監督は選手として礎を築いたのだった。
そんなルーツがある熱血漢が監督を務めるだけに、西日本工業大は大学野球部としては珍しく、厳しく統率のとれたチームである。OBの多くは東証一部上場企業など、大手企業に就職する。九州内では「就職に強い西工大」と評判になっている。
今秋に4年生の丸山翔大がヤクルトから育成ドラフト4位指名を受けて初めてNPB選手が誕生したものの、野球部としては名門というわけではない。北部ブロックが誕生した2016年春以降、9季あったリーグ戦はすべて日本文理大が優勝している。
高校3年時に甲子園で活躍した隅田には、ほかにも魅力的な誘いがあったという。それでも西日本工業大に進んだ理由を本人はこのように語る。
「高校2年秋に左ヒジを疲労骨折したんですけど、そのタイミングで(波佐見高校の)得永(健)監督から西工大を勧めてもらったんです。ヒジをケガしたピッチャーを獲ってくれるなんて、本来はありえない話だと思うんです。ヒジが治ってよくなったからといって、進路を変えるのはイヤでした」
一方で、隅田の頭には「名門に行くより、1年生から投げるチャンスがあるだろう」という、したたかな計算もあった。「西工大に進んだメリットはたくさんある」と言う隅田は、キッパリとこう続けた。
「結局、やるのは自分なんで。どこの大学に行こうが、どんな環境だろうが、自分が頑張ればいいだけなんで」
切れ長の目と淡々とした語り口は、いかにも勝負師のムードが漂う。周囲に流されず、自分のやるべきことを見つめて黙々と取り組む。「こんな選手がプロで活躍するのかもしれない」と思わせるだけの説得力がある。
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