2020.11.09

来年のドラフトの目玉は大谷翔平級
スラッガー。岐阜の怪童・阪口樂

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 もはやライトは、外野フェンスの手前にピッタリと張り付いていた。

 高校野球でここまで極端なポジショニングを取られるだけで、この大型打者がどれだけの逸材かが伝わってくる。

 打者の名は阪口樂(うた/岐阜第一)という。その名を一躍広めたのは、今夏の岐阜独自大会・帝京大可児戦だった。この試合で阪口は2本塁打を含む5打数4安打と大暴れする。

岐阜第一の大型スラッガー・阪口樂 圧巻だったのは最終打席だった。マウンドに立つのは帝京大可児の加藤翼。約3カ月後のドラフト会議で中日から5位指名を受けることになる本格派右腕は、阪口を打席に迎えて150キロ台の快速球を連発する。阪口は、そんなフルスロットルの加藤が投じた149キロのストレートを完璧にとらえ、ライトスタンドへと運んでみせた。

 身長186センチ、体重87キロの巨体で右投左打。下半身はさほど大きなアクションを取らず、柔らかいスイングでボールを遠くへと運ぶ。その姿には大谷翔平(エンゼルス)すら重なってくる。

 完全に書き手の主観でしかないが、阪口がバッターボックスで構えただけで「打ちそうだな」と感じるものがある。

 だが、今秋ベスト4まで勝ち進んだ東海大会では、阪口は打撃不振に苦しんでいた。

1回戦(松阪商)4打数0安打
準々決勝(藤枝明誠)3打数0安打1四球
準決勝(県岐阜商)3打数0安打1四球

 阪口は「県大会が終わってから調子が上がらなくて、不安のまま大会に入ってしまった」と振り返り、続けて自分の状態を具体的に語った。

「左ピッチャーに対しては腰が早く開いたり、右ピッチャーに対しては引っ張りこんでしまったりしていました。そこが修正できなかったから、こういう結果になったのだと思います」

 4番打者だけでなく、エースという重責も担い、相手チームからは徹底マークにあう。それでも阪口は弁解めいた言葉を口にすることはなかった。