2020.11.14

東北大会で公立校が強豪を次々撃破。
急成長したエースが魂の500球

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Taguchi Genki

 ちょうど500球で大会を終えた。

 規定により「1週間・500球」の球数制限が設けられた今秋の東北大会で、柴田のエース・谷木亮太は1回戦から準決勝までの4試合すべてに登板し、481球を投げていた。

 それでいながら、仙台育英との決勝戦でも0対7と大量ビハインドの4回途中からマウンドに立ち、右腕を振った。たった19球。一死しか奪えず4失点を喫したとはいえ、谷木は文字どおり"投げきった"わけだ。

 結局、柴田は仙台育英に1対18で敗れた。

チームを東北大会初の準優勝に導いた柴田高校のエース・谷木亮太 宮城の公立校。夏は直近の3年間すべてベスト8以上と県内では実績を残すが、甲子園出場は春夏通じて一度もなく、OBにロッテなどで活躍した小坂誠などがいるが、全国的にはまったくの無名校である。その柴田がこの秋、初めて東北大会で準優勝まで上り詰めた事実は、大きな衝撃を与えた。

 チームの大躍進。その中心には谷木がいた。ストレートは130キロ台前半。実戦で用いる変化球はカーブ、スライダー、チェンジアップがある。投球の身上は「内角と外角へ丁寧に投げ分け、打たせて取ること」だという。

 よくいえば安定感があり、悪くいえばこれといった特徴のないオーソドックスな投手と表現できる。ただ谷木に限れば、そのような評価など現時点では無意味である。なぜなら、このスタイルをわずか2カ月あまりで築き上げたからだ。

 柴田の指揮を執って今年で11年目を迎える平塚誠監督は、次のように語る。

「谷木は不器用そうに見えるんですけど、実際は器用なんです。入学した当初からいいストレートを投げていたので『将来的にエースになってくれるだろうな』とは思っていましたが、ここまでやってくれるとは......」

 指揮官から早々に「エース候補」と期待を寄せられていたものの、今夏の独自大会ではベンチ入りすらできなかった。「3年生主体」というチーム事情があったのも事実だが、なにより投手としての能力が足りなかった。この時点で、谷木はストレートとカーブしか投げられなかったのだ。