2020.08.17

明石商・来田涼斗が挑む0.23秒の壁。
「間を感じられない男」からの卒業は近い

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

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──あいつはタイミングを計れない男なんです。

 1年前、明石商(兵庫)の狭間善徳監督は来田涼斗(きた・りょうと)のことをそう評した。

プロ注目のスラッガー、明石商の来田涼斗 来田は神戸ドラゴンズに所属した中学時代から、30校近い有力校の間で争奪戦が繰り広げられた逸材外野手である。1年夏から3季連続で甲子園に出場し、2年春の選抜高校野球・智弁和歌山(和歌山)戦では、史上初の先頭打者本塁打とサヨナラ本塁打を同一試合で放つ離れ業を演じている。

 当然、高校野球界では知らぬ者はいないほどの有名人になり、プロスカウトからも注目されている。だが、狭間監督は来田について辛口だった。

 2年夏の甲子園の試合後、狭間監督はこう語っている。

「ピッチャーがボールを離したところからホームまでボールが到達するのに0.43秒かかると言われています。高校生のバッターはトップからインパクトまで0.2秒弱かかる。つまり0.43から0.2を引いた0.23秒がバッターに残された時間なんですが、来田はまだその間(ま)を感じられていない」

 昨年までの来田の打席を見ていると、タイミングの取り方が一定ではなかった。ボールを呼び込む際に右足を着地するのが早く、苦し紛れに上体だけでスイングするシーンも見られた。

 センバツで放った先頭打者本塁打もサヨナラ本塁打も、2ストライクと追い込まれ、ノーステップ打法に切り替えてから放ったもの。狭間監督は「時間を感じられない選手が足を高く上げるのはどうなのか」と、来田に苦言を呈していた。

 この来田の「タイミングを計れない」という性質は守備にも悪影響を及ぼしていた。昨夏には、高いセンターフライに対して落下点に入るのが遅れ、あやうく落球しかけたこともあった。狭間監督は「フライを捕るのも危なかったでしょう。そのあたりのタイミングを計れないんですよ」と語っている。