仙台育英、敗戦も悲願の日本一へ。大器の2年生両腕がしっかり成長中

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

◆「甲子園交流試合」絶対注目の好投手たち>>

 本気で日本一を狙う仙台育英にとっては、厳しい現実を突きつけられた夏だった。

 夏の宮城独自大会は「オール3年生」の布陣で臨み、苦戦を強いられながらも優勝。続く東北大会では下級生もベンチに入れて戦い、一関学院(岩手)、ノースアジア大明桜(秋田)と強敵を下しながら、決勝戦で聖光学院(福島)に0対8と大敗した。

 中2日で臨んだ2020年甲子園交流試合では、倉敷商(岡山)に終盤引き離され、1対6と完敗。今大会は日本一を争うトーナメント戦ではないとはいえ、仙台育英にとっては大きな課題の残る敗戦になった。

 そんなチームにあって、希望の光も差し込んだ。それは伊藤樹(たつき)、笹倉世凪(せな)という、新チームで大看板になりうる2年生が成長を見せたことだ。

倉敷商戦で140キロ超えを連発した仙台育英の2年生投手・伊藤樹倉敷商戦で140キロ超えを連発した仙台育英の2年生投手・伊藤樹 倉敷商戦で1対6とリードが広がった7回裏から打者3人に投げた伊藤は、ストレート中心の投球で最速146キロを計測。2奪三振を奪った。

「これまで丁寧なスタイルでやってきたんですけど、昨年秋から『ストレートをスケールアップしよう』と須江(航)先生から言われていて。真っすぐが強くならないと......と思ってやってきました」

 打撃のいい笹倉は5番・ファーストとして3打数1安打を記録し、8回裏には無死一、三塁の場面で登板して無失点に抑えている。

「1年の時はフォームを気にして小さく投げていたんですけど、ある程度はコントロールできるようになって、もっとダイナミックに体を使おうと意識していました」

 ふたりは仙台育英の系列校である秀光中等教育学校出身。もとは須江監督が2018年1月に仙台育英監督に就任するまで監督を務め、2014年には全国中学校野球大会(全中)で優勝を果たしている強豪である。

 伊藤と笹倉は中学時代にダブルエースとして名を馳せ、2018年夏の全中で準優勝を飾っている。完成度が高く、総合力で勝負する伊藤と、左腕からの剛球を武器にする笹倉。中学軟式野球部に140キロを超える速球を投げる投手が複数いることは、前代未聞といってよかった。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る