前代未聞!公式戦初出場が甲子園。加藤学園1年は「忍者」に似ていた

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

◆「史上最悪の大誤審」。当事者が明かす大荒れ試合の記憶>>

 想像してみてほしい。もしあなたが高校に入学して、野球部に入って最初に出場する公式戦が甲子園だったら......。

 今夏の2020年甲子園交流試合に出場した32校のうち、ひとりだけ1年生で1ケタの背番号をつけた選手がいる。それが加藤学園(静岡)の太田圭哉である。

再三の好守でチームの甲子園初勝利に貢献した加藤学園の太田圭哉再三の好守でチームの甲子園初勝利に貢献した加藤学園の太田圭哉 身長169センチ、体重67キロ。標準的な高校球児よりも小柄な体で、太田は背番号6をつけて甲子園にやってきた。6番は従来、内野の要であるショートの選手がつける番号だ。

「メンバーを外れて補助をしっかりやってくれている先輩の分もやらないといけない。1年生らしいプレーをしないと......と思っていました」

 1番・ショートで先発出場した太田は「1年生らしい」どころか、「1年生らしからぬ」大暴れを見せた。打っては3打数2安打1四球。走っては盗塁を決めるなど2得点。守っては好守を連発。鹿児島城西(鹿児島)に3対1で勝利したチームに、走攻守にわたって大きく貢献した。

 それでも、太田が殊勝に語るのも無理もない。もし、今春3月開幕予定だった選抜高校野球大会(センバツ)が開催されていれば、入学前の太田に出場資格はなかったのだ。イレギュラーな交流試合だからこそ、太田は背番号6をつけ、甲子園の土を踏めたのだった。

 昨秋、加藤学園は静岡県大会で準優勝の好成績を収め、さらに東海大会でもベスト4に進出している。例年、東海地区のセンバツ出場枠は2のため、決勝進出を逃した加藤学園の選出は絶望的と見られた。だが、秋の明治神宮大会で東海地区代表の中京大中京(愛知)が優勝。東海地区に明治神宮枠が増枠され、加藤学園に初の甲子園出場という僥倖(ぎょうこう)が舞い込んだ。

 当時中学3年生だった太田が、進学先を加藤学園に決めたのはちょうどその頃のタイミングだったという。

「大きい理由は、米山(学)監督がもともとショートですごい選手だったと聞いて、そんな人から学んで自分も一流になりたいと思ったからです」

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