破綻寸前から再建した創成館のポリシー。野球は守備的、経営は攻撃的

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

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 野球は守備的、学校経営は攻撃的──。

 創成館という高校を簡潔に言い表すなら、この言葉に尽きるだろう。

甲子園交流試合で平田に4−0で勝利した創成館ナイン甲子園交流試合で平田に4−0で勝利した創成館ナイン まずは「攻撃的」な部分から説明したい。今年の1月、取材のため、長崎の創成館高校を訪れた。レンタカーに乗って諫早(いさはや)インターチェンジを下り、カーナビの指示に従って左折しようとすると、斜め前方の曲がり角に巨大な看板が見えた。そこには大きく、こう書かれていた。

《創成館高校
9年連続定員オーバー!
入学者第一志望率約90%!
選ばれ続ける学校
県内トップクラスの人気校!》

 看板の上部には、巨大なパラボラアンテナが取り付けられている。まるで地球防衛軍のような威容に圧倒され、左折するタイミングを逃してしまった。

 ステンドグラスがはめ込まれた洋風な校舎の正面玄関をくぐると、左手にスポーツメーカー・アンダーアーマーのショップがある。

 創成館は同社と契約を結び、体操服や運動部のユニホームのカラー、ロゴを統一したスクールブランディング、アンダーアーマー監修によるトレーニングルームリニューアルなど、改革を進めている。

 創成館はかつて、破産寸前の経営危機に陥った時期があった。経営を建て直したのは、現在は理事長と校長を兼務する奥田修史校長である。

 奥田校長は「偏差値が出せないほどの底辺校だった」と言う創成館を再建するためにさまざまなアイデアを駆使した。その策のひとつが「野球部の強化」だった。

 奥田校長はこう語っていた。

「私が理事長になった当時、硬式野球部は万年長崎ベスト8のレベルでした。学校再建計画を立てた際、ひとつの目玉が野球部の改革だったんです。野球部が甲子園に出ることで学校の知名度が上がって、受験生が増えるのは間違いありません。高校スポーツでNHKが第1試合から全試合を放送するのは野球だけ。アメリカではカレッジスポーツが盛んですが、日本の場合は高校野球が文化と言っていいくらいになっています」

 これほどまで、ストレートに高校野球と学校経営の因果関係を語ってくれる学校経営者は珍しいだろう。

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