「日本一空気の読めない高校」と言われた盛岡大付の主将がまさかの転身 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 だが、これから岩手代表として甲子園に向かおうとしている盛岡大付の選手たちに対して、あまりに心ない野次だった。そして甲子園で初戦敗退に終わった彼らに追い打ちをかけるように、大会の閉会式で当時の高野連会長がこう発言する。

「とりわけ残念なのは、花巻東の大谷投手をこの甲子園で見られなかったことでした」

 盛岡大付は「招かれざる客」だったのか──。この一件を機に、私は「野球留学生」がどのような思いで親元を離れ、生活しているのか実態を伝えたいと考えた。そして『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない!』という書籍を上梓した。最後の取材で行き着いたのが、野次を浴びた盛岡大付のキャプテン・藤田だった。

 当時の心ない声は、今でも癒えない傷になっているのではないか。そんな私の予想に反して、藤田は野次を浴びた当時の心境をこう振り返った。

「『もっと言えよ、くだらねぇ』と思っていました。僕にとっては、傷ひとつつかなかった出来事ですから」

 閉会式で野次が飛んだことも、高野連の会長に「大谷が見たかった」と言われても、藤田をはじめ盛岡大付のメンバーは「笑っていた」という。

「だって、僕らがやってきたことは、神奈川だろうと岩手だろうと、どこでも変わらないですから。一番努力して、一番チームのことを考えたのは俺たちだ、という自信がありますから」

 藤田はそう言って、爽やかに笑った。

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