「日本一空気の読めない高校」と言われた
盛岡大付の主将がまさかの転身

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

「各カテゴリーの優勝者は、リングにお上がりください!」

 リングアナウンサーに促されるように、10名の優勝者がリングに上がる。その中央に立ち、左拳を握りしめて喜びを表現したのが藤田貴暉(よしき/ドラゴンテイル)だった。

 3月15日、第24回J−NETWORKアマチュア全日本選手権大会(ゴールドジムサウス東京アネックス)・男子Bリーグ67kgクラスで藤田は優勝を飾った。ウェーブがかった茶髪に、切れ長の目。贅肉を削ぎ落とした肉体には、日頃のトレーニングの跡がうかがえた。

8年前、盛岡大付の主将として甲子園に出場した藤田貴暉(写真右)8年前、盛岡大付の主将として甲子園に出場した藤田貴暉(写真右) リングを降りた藤田は、興奮さめやらぬ様子でこう語った。

「これまでBクラスでは準優勝が最高だったので、優勝できてうれしいです。これでAクラスに上がって、優勝できればプロの道も見えてきます」

 キックボクサーとして脂が乗り始めている藤田は、2020年で26歳になった。

 今から8年前、藤田は高校球児だった。それも大谷翔平(現・エンゼルス)を擁する花巻東を破った、盛岡大付のキャプテンだった。

「当時はいろいろ言われましたよ。『日本一空気の読めない高校』とかね」

 藤田はニヒルな笑みを浮かべて、優勝直後の「雑音」を教えてくれた。

 大谷が岩手大会準決勝・一関学院戦で最速160キロを計測したことは、センセーショナルに報じられた。盛岡大付との決勝戦は全国的な注目を浴び、多くの報道陣が岩手県営野球場に集結した。

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