2020.06.10

大会の主役・オコエ瑠偉をNo.1左腕・
小笠原慎之介は「石直球」で料理した

  • 楊順行●文 text by Yo Nobuyuki
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

こんな対決あったのか!
高校野球レア勝負@甲子園
第10回 2015年夏
オコエ瑠偉(関東一高)×小笠原慎之介(東海大相模)

 その場面がやってきたのは2015年、第97回全国高等学校野球選手権大会の準決勝だった。東海大相模(神奈川)と関東一高(東東京)の一戦。9点を追う関東一高の8回表の攻撃。2点を返し、なおも二死二塁で打席にオコエ瑠偉(現・楽天)が入る。マウンドには、この回から吉田凌(現・オリックス)をリリーフした小笠原慎之介(現・中日)がいた。

「高校野球100年」のこの夏、オコエは早稲田実業(西東京)のスーパー1年生・清宮幸太郎(現・日本ハム)と並び、間違いなく主役だった。

身体能力の高さをいかんなく発揮した関東一高・オコエ瑠偉 高岡商(富山)との初戦(2回戦)、第1打席でオコエの打球は一塁手を強襲。はじいた打球がフェンス際まで転がる間に、オコエはためらうことなくスピードに乗って二塁を陥れる。一塁強襲二塁打だ。

 さらに3回には、49年ぶりとなる大会史上2人目の1イニング2三塁打を記録。関東一高の米沢貴光監督はこう語った。

「(オコエは)塁間3歩くらいでいく(笑)。1イニング2三塁打は珍しいことではありません。私は社会人野球のシダックス時代にキューバ代表の選手を見てきましたが、それも含めて見たことのないレベルのスピード。『頼むからベースだけは踏んでくれ』と念押ししています」

 50メートル5秒96はむろん俊足の部類だが、ほれぼれするのはスピードに乗ったときのオコエだ。だが、いくらなんでも塁間3歩は……このことを本人に伝えると苦笑した。

「3歩……それはさすがに人間じゃないですね(笑)。でも、ベースランニングは得意です。(走る)距離が長ければ長いほどよくて、二塁打はトップスピードに乗る前にベースに着いちゃうので、三塁打が一番いいですね」