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全国実績ナシ→大学で衝撃デビュー。
慶応大左腕が魅力UPでドラ1候補へ

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 佐藤宏樹が帰ってきた──。

 3月15日、富士大とのオープン戦の先発マウンドに慶應義塾大の新4年生左腕・佐藤が上がった。4回を投げて7奪三振、無失点。試合後、佐藤は野球部を通してこんなコメントを出した(以下、カギカッコ内同)。

「体調はとてもいい感じですし、順調です。今は1週間に一度の登板で間隔を空けてもらえるので、どこにピークを持っていくかを考えられますから。球数も80球を目安に抑えてもらっていますが、今後増えていくと思います」

1年秋に東京六大学リーグで3勝をマークした慶應大の左腕・佐藤宏樹1年秋に東京六大学リーグで3勝をマークした慶應大の左腕・佐藤宏樹 大学1年秋に佐藤は左ヒジを痛めている。大館鳳鳴高(秋田)では県内でこそ名の知られた投手だったが、3年夏は初戦敗退。全国実績もない投手が、名門大学で1年秋に無双の投球を見せた。リーグ戦9試合に登板して3勝0敗、防御率1.03。その中身がとてつもない。26回1/3を投げて、被安打はわずか10、奪三振は42を数えた。誰もが3年後にプロ球団が争奪戦に乗り出す未来を描いたに違いない。

 だが、佐藤の左ヒジはその時点で悲鳴をあげていた。佐藤は「体ができていないのに、腕をバンバン振っていたので......」と当時を振り返る。

 佐藤の投球フォームは躍動感にあふれている。セットポジションから右ヒザを胸の位置まで振り上げて、しなやかな左腕でたっぷりとテイクバックをとり、右脇に入り込むまで左腕を叩きつける。このダイナミックなフォームだから150キロ前後に達する快速球と縦に大きく落ちるスライダーが投げられる反面、身体の内部にかかる負担も大きかった。

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