全国実績ナシ→大学で衝撃デビュー。慶応大左腕が魅力UPでドラ1候補へ (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 手術を回避して治療にあたったが、2年春以降の佐藤は本調子にはほど遠い状態が続いた。とはいえ、慶應義塾大は大学球界ナンバーワンといっても過言ではない投手層を誇るだけに、焦らずに回復・調整ができた。

 そして迎えた大学最終学年、佐藤は大きなターニングポイントを迎えている。きっかけは2月のアメリカキャンプだった。

「人生で一番に近いくらい、大きなものを得たと思います。最終日にダイヤモンドバックスのマイナーと試合をしたのですが、調整中のメジャーリーガーとも対戦できたんです。真っすぐと縦スラが通用したのは収穫でしたが、曲がりの大きな変化球だけでは振ってもらえないことに気づいたんです」

 アメリカではほかにも身体能力の検査や動作解析、ボールの回転の成分解析も行なった。そして佐藤はカットボールを磨くことを決意する。曲がり幅が大きければ、打者は投手がリリースした直後に変化球だとわかってしまう。ストレートの軌道からいかに小さく曲げるかがポイントだった。

 試行錯誤の末、佐藤がカットボールの感覚を見つけたのは富士大戦の前日だった。富士大戦では意図的にカットボールを増やし、右打者・左打者ともに抑えられる感触を得た。

 その一方で抜け球も多く、4四球と制球面に課題も残した。佐藤は肩関節周辺が非常に柔らかいため、腕を大きく回せるのが特徴だ。だが、それは諸刃の剣にもなる。可動域が広い分、常に同じ腕の振りを再現することが難しいのだ。当然、本人もその難点は承知している。

「柔らかい分、1イニングごとに感覚が違うこともありますし、疲れによって可動域も変わっていきますから。でも、投げていくなかで見つけるしかありませんし、感じなきゃいけないので」

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