2020.03.25

日体大で本気で二刀流に挑む逸材。
指名漏れも2年後を見据え肉体改造中

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 試合が始まる前から、無観客試合ということが惜しまれるシーンが見られた。

 ジャイアンツ球場の一塁側ファウルエリアで大遠投を繰り返す2人組がいた。キャッチャーミットをはめてホームベース付近にいたのは現役選手ではなく、日本体育大の辻孟彦コーチだった。かつて中日で投手としてプレーし、近年は松本航(西武)ら好投手を続々とNPBに送り出している敏腕コーチである。

 辻コーチの相手はライトフェンスを背にして立つ、小柄な左腕だった。2014年に現役を退いた辻コーチが投じたワンバウンドのボールをキャッチすると、軸足一本でケンケンをする。その反動を生かして左腕をしなやかに振ると、ボールはぐんぐん加速して辻コーチのミットに大きな音を響かせた。ボールの勢い、回転、球筋、どれをとっても惚れ惚れするボールだった。

藤嶺藤沢高時代からプロ注目の投手だった矢澤宏太 この左腕は巨人三軍とのオープン戦で先発する矢澤宏太である。藤嶺藤沢高(神奈川)から日本体育大に進んだ新2年生。昨冬の大学日本代表候補合宿には1年生ながら招集され、再来年のドラフト候補と言っても差し支えないだろう。

 遠投の後、徐々に距離を縮めて約20メートルの距離から立ち投げに移る。このときのボールは凄まじかった。辻コーチはミットを弾き飛ばされそうになりながら、やっとの思いで捕球していた。強烈なスピンのかかった快速球。試合が始まる前から、とんでもないものを見せてもらった。

 試合後、矢澤に試合前の遠投とキャッチボールについて聞くと、まずは辻コーチのリアクションについて突っ込みが入った。