2020.03.23

仙台大にドラ1候補の巨漢右腕。
ミットを粉砕しそうな破壊力の剛球だ

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 野球を見ていると、時に勝敗を超越して「いいものを見た」と思える瞬間に立ち会えるものだ。今秋のドラフト候補右腕・宇田川優希(仙台大)が投げるストレートにも、それだけの力がある。

 今のところ宇田川の存在を知るのは、限られたアマチュア野球ファンだけだろう。小中学生時代は無名の存在で、埼玉の八潮南高では140キロを超える速球派投手として多少話題になった程度。仙台大では全国大会に出場した経験もない。

最速152キロを誇る今秋のドラフト候補、仙台大の宇田川優希 だが、宇田川の「渾身の1球」を目にすれば、たちまちその魅力のとりこになるはずだ。身長184センチ、体重94キロの巨体から角度をつけて放たれる剛速球は、捕手のミットを粉砕しそうなほどの破壊力がある。最速152キロという数字以上の球威と迫力。宇田川のボールには夢が詰まっている。

 それなのに宇田川の存在が全国区になっていない理由は、その投球精度の低さにある。投げてみないとわからない危うさがあり、自慢の剛球も好不調の波がある。

「もどかしさはあります」

 宇田川は喜怒哀楽をあまり表情に出さないタイプらしく、淡々とそう語った。

 3月11日にはロッテ二軍とのオープン戦に先発登板。バックネット裏に多数のNPBスカウトが見守るなかでのマウンドだったが、4回を投げて4失点。NPBの打者を圧倒するボールを投げたかと思えば、直後に炭酸の抜けたビールのような棒球がくる。5三振こそ奪ったものの、3安打3四球を許した。味方の拙守にも足を引っ張られたが、ドラフト候補としては不満の残る投球内容だった。宇田川は試合後、自身の投球をこう振り返った。

「今年に入って全然スピードが出ていないので焦りはあるんですけど、今はそこにこだわらずに変化球で勝負できればいいかなと思います。今日は練習してきたカットボールが通用したのはよかったです」