車イス生活の仲間のためにも。滋賀大会で連戦好投→怪腕の評価が急上昇

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Sawai Fumi

 伊香高(滋賀)のエース・隼瀬一樹(はやせ・かずき)の評判が広まるきっかけになったのは、昨年秋の滋賀大会だった。初戦で、前チームからレギュラーの武川廉をはじめ注目打者が多く揃う滋賀学園を相手に7安打を許しながらも要所を締め、完封勝利を収めた。

昨年秋の滋賀大会でチームをベスト4に導いた伊香のエース・隼瀬一樹昨年秋の滋賀大会でチームをベスト4に導いた伊香のエース・隼瀬一樹「『1回から3回まで抑えれば流れがくる』と小島(義博)先生に言われて、気合いが入りました。まず初回をしっかり抑えようと思いました」

 そうマウンドに上がった隼瀬だったが、先頭打者のセンターへの飛球を中堅手が捕球できず(打球に触れていなかったため記録は安打)、開始早々、いきなり走者を背負う展開となった。だが、隼瀬は冷静だった。

「初回に点を取られたらズルズルいってしまう。ここはまずゼロに抑えないと」

 中軸に対して臆することなく腕を振り、初回をゼロに抑えると、その後も何度かピンチを背負うも力のあるストレートで強力打線を封じ込め、4回に味方が挙げた1点を守り切った。

 続く滋賀短大付戦では9三振を奪い、2試合連続完封勝利。準々決勝では140キロ台中盤の速球を投げる瀬田工の本格派右腕・小辻鷹仁にも投げ勝った。

 そして準決勝の相手となったのは、昨年夏の甲子園に出場した近江。「高校に入って初めての連投だったんです。自分がどこまで投げられるのかがわからなくて......」と、試合前は不安を吐露していた隼瀬だっただが、近江打線に的を絞らせず、10回までスコアボードにゼロを並べた。試合は延長11回サヨナラで敗れたが、被安打6と全国レベルの強豪相手に堂々のピッチングを披露した。

1 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る