仙台大にドラ1候補の巨漢右腕。ミットを粉砕しそうな破壊力の剛球だ (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 仙台大の投手コーチを務めるのは、自身もロッテでプレーした坪井俊樹コーチだ。坪井コーチに宇田川について聞くと、開口一番「うらやましいですよね」と返ってきた。

「全国を見渡しても、あれだけの素材はなかなかいないでしょう。あの体と強さがあって、柔らかさがある。足が地面に着くまであれだけ上半身が残るピッチャーはいませんよ」

 宇田川の肉体は大きく、強いだけでなく、柔らかい。腕がしなって見える投手は多いが、宇田川の場合は胸からしなって見える。この柔らかさがあるからこそ、ハマったときはとてつもないボールを投げられる反面、この柔らかさを自分で制御する難しさもある。宇田川はこうも語っていた。

「『腕が遅れて出てくる』とはよく言われます。いいボールがいく時は、腕を振っていてリリース直前くらいにわかるんです。最近はそれがなかったんですけど、やっと感覚が戻ってきました」

 宇田川は日本人の父とフィリピン人の母を持ち、四男一女の三男坊。陽気な性格の母に対して、宇田川本人は「あまり人と話すほうじゃない」と苦笑する。

「ハーフだからといって嫌な思いをしたことはないですし、たぶん150キロを超えるボールが投げられるのも、そういうの(ルーツ)が関係していると思うので、自分にとってはいいことだと思っています」

 名門相手の快投で株を上げたとはいえ、勝負はこれから。仙台大が所属する仙台六大学リーグには、全国大会常連の東北福祉大という強大なライバルがそびえる。宇田川に東北福祉大への勝算を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「仙台大が福祉に負けるのは、だいたいピッチャーが打たれる時。勝つ時は接戦で勝つイメージなので、自分たちが崩れずに投げきれば勝てると思います」

 いまだ全国大会を知らない怪腕がその舞台に立った時、もはやドラフト1位でなければ獲れない存在になっているはずだ。

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