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元女子大生マネージャーが語る慶大野球部の強さ「悪い補欠がいない」 (4ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

【努力を続けている人にチャンスを】

 東京大学を除く五大学の中で、甲子園球児の割合は慶應義塾大学が一番少ないが、高校時代に無名だった選手が才能を開花させることが多いのが近年の特徴だ。

「高校時代にそれほどの成績を残していない選手が慶應に入ってから伸びるのは、頂点を経験していないからだと思います。ハングリー精神も、向上心もあります。一浪して入学してきた選手が活躍することも珍しくありませんが、いろいろな経歴の選手が入り混じって競争するところがチームの強さにつながっているのかもしれません」

 慶應義塾大学OBの大久保監督は、社会人野球で活躍し、オリンピックもプロ野球も経験した名選手。選手の名前にこだわらず、実力を見定めて試合に起用することで、3度の優勝を勝ち取った。

「苦労して上がってきた選手をものすごく大事にしてくれる監督です。自分の特長を最大限に生かす人、チームにいい影響を与える人、努力を続けている人にチャンスを与えてくれますね」

 選手の努力を、色眼鏡なしで見る監督が「補欠の力」をさらに引き出した。2018年、慶應義塾大学の投手のうち、甲子園に出場した経験のある投手はひとりだけだった。それでも、甲子園球児を揃えたチームに勝つ。そこに慶應義塾大学の強さがある。
 
 慶應義塾体育会野球部で、逆境にありながらも「逃げない補欠」を見てきた小林は、書籍『レギュラーになれないきみへ』のなかで、出場機会に恵まれない選手へメッセージを送っている。

「自分が試合に出られないからといって、その競技まで嫌いになってほしくありません。補欠になったから野球を嫌いになるのはもったいない。自分から裏方に回るという決断をするのは難しいけど、関わりは続けてほしいなと思います」

 誰かがきっと、努力する姿を見てくれていると小林は考えている。

「野球のよさは、ホームベースを踏んだ人のまわりに人が集まるところ。ヒットを打った人ではなくて、ランナーのまわりに。団体競技だからチームの力が必要で、それはいろいろな人の支えでできています。補欠の力があってこその団体競技。そのことを私は肌で感じてきました。

 逆境に立ち向かえば自分のプラスになると思うので、絶対に逃げないでほしい。一回逃げたら、逃げ癖がついちゃうから」

 秋季リーグ戦最後の早稲田大学戦で勝ち点を落とした慶應義塾大学。その悔しさを胸に、今季限りでの退任を発表した大久保監督のもと、11月15日に開幕する明治神宮大会に臨む。

■元永知宏 著
レギュラーになれないきみへ』(岩波ジュニア新書)

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