元女子大生マネージャーが語る慶大野球部の強さ「悪い補欠がいない」

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

 開幕からの9連勝で今秋、3シーズンぶり37回目の東京六大学リーグ制覇を果たした慶應義塾大学。2015年に大久保秀昭監督が就任後、2年間は優勝から遠ざかったが、ここ7シーズンは勝ち点4を挙げる安定した強さを見せた。6シーズンで3度の優勝――東京六大学の名門はどのようにして甦ったのか。昨年、東京六大学史上初の女性主務を務めた小林由佳が強さの秘密を語る!

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 2017年秋、2018年春と連覇を果たし、2019年秋のリーグ戦でも優勝を飾った慶應義塾体育会野球部に、甲子園球児は多くない。毎年のように甲子園のスターが入ってくる早稲田大学や法政大学、明治大学など強敵を相手に、7シーズン連続で勝ち点4を獲得。選手が入れ替わっても、安定した強さを誇っている。

東京六大学野球秋季リーグで優勝した慶應大学野球部東京六大学野球秋季リーグで優勝した慶應大学野球部 2018年に東京六大学史上初の女性主務になる小林由佳が、慶應義塾体育会野球部に入ったのは2015年春のこと。当時、野球部には200人もの部員がいた。4年生で試合に出て活躍する選手が多い半面、就職活動に専念するためにグラウンドに顔を出さない選手もいたという。東京六大学リーグでの優勝を目標に掲げていても、全員が一丸になるには難しい環境だった。

 4年生にはキャプテンの横尾俊建(北海道日本ハムファイターズ ) や山本泰寛 (読売ジャイアンツ)、3年に矢崎拓也(旧姓・加藤。広島東洋カープ)など実力のある選手がたくさんいたが、2015年春は優勝に届かなかった。

 小林が振り返る。

「大久保監督が就任されたばかりで、今と比べれば、選手とのコミュニケーションという意味で十分ではなかったのかもしれません。個々の能力がありながら、優勝できませんでした。私は部員のひとりとして、チームの優勝を全員で喜べるようにしたいと思っていました。

 私たちが3年生になった時には、1学年上の先輩が4年生をうまくまとめてくださり、試合に出ないメンバー外の選手たちも練習のサポートをしてくれるようになりました」

 2017年春は、立教大学の18年ぶりのリーグ優勝、59年ぶりの日本一に沸いたシーズン。その陰で密かに改革を始めていた。

「4年生がサポートに回り、1、2年生の練習の時間を増やす。そういう流れが自然とできました」

 その成果はすぐに出た。秋季リーグ戦初戦の東京大学との試合を落としながら、最後の早稲田大学戦で2連勝し、9勝3敗1分、勝ち点4で7シーズンぶりに東京六大学リーグを制した。4年生の「献身」が呼び込んだ優勝だった。

「優勝したことで、4年生がしてくれたことが間違っていなかったと証明されました。私たちの学年はレギュラーがほとんどいなかったので、その形を踏襲しようということになりました」

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