村田修一を育てた名監督が現代風に指導「1年生を潰しちゃいけない」 (2ページ目)
またこの練習の際、バットは通常よりも2インチほど長いものだった。ヘッドを効かせないとボールが遠くに飛ばないため、この練習で選手たちはヘッドを効かせたスイングが身につくというわけだ。さらに言えば、緩い球を投げることは誰にでもできるため、打撃投手の負担軽減にもつながる。
そう説明してくれた鈴木から、さらに驚くことを聞かされた。
「いま打っているのは、みんな1年生です」
1年生が先に打ち、練習を先に上がるのも1年生だ。夏の大会でベンチに入る1年生は2人ほどであるが、それでも1年全員が先に打つ。
「夏で終わりじゃないし、甲子園がすべてではない。時は流れていくんです。僕らの現役の頃はこの時期、1年生は先輩の世話が中心でした。でも、今はそんな時代じゃありません」
「今はそんな時代じゃない」という言葉は、今回のインタビュー中に何度も出てきた。
「3年生が長男、2年生が次男、1年生が三男の家族なんです。もしお土産があったら、それを長男から食べますか? 1年生を潰しちゃいけない。風呂や洗濯も1年生が先。余裕を持たせています」
そんな家族の大黒柱が、主将の岡崎雄大だ。鈴木のもとで2年3カ月にわたって野球の楽しさ、奥深さを学んできた。印象に残っている鈴木の言葉はなにかと聞くと「"できた"は終わりでなくて始まり。そこからどう伸ばしていくか」だと言う。
岡崎が主将となってから復活した試合前の練習メニューがある。それは外野でのアップ時に行なうもので、ボールを下から投げて、受け手を左右に振り、ダイビングキャッチで捕球を試みるというものだ。バレーボールのダイビングレシーブの練習のようだが、これは日大時代も神宮球場に行く前のグラウンドでやっていたことと鈴木は言う。
「試合前は大事に調整するのでなく、ユニフォームを汚して心を無にした方がいい。でも、こちらからわざわざやらせる必要もないし、気を抜いてやるとケガにもつながるので、2年前からやめていたんです。そしたら岡崎が『また、あれをやりましょう』って言ってきたんです」
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