2018.12.06

松本航のボールのキレ、東妻勇輔の度胸。
元プロコーチは衝撃を受けた

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu
  • 中西陽香●写真 photo by Nakanishi Haruka

日体大・辻孟彦コーチの教え(前編)

 1025日のドラフト会議。中日の元投手で、現在は日体大で投手コーチを務める辻孟彦(たけひこ)は自らのドラフトの時(2011年ドラフト4位指名)とは違って、リラックスした様子で教え子たちの指名を待っていた。

 そして4年間指導してきた松本航が西武からドラフト1位指名を受け、東妻勇輔(あづま・ゆうすけ)もロッテに2位指名された。さらに、大学4年時に1年間だけ指導した大貫晋一(新日鐵住金鹿島)もDeNAにドラフト3位指名と、それぞれ高い評価を受け、プロ野球選手として第一歩を踏み出した。

(写真左から)ロッテ2位指名の東妻勇輔、辻孟彦コーチ、西武1位指名の松本航 辻が投手コーチに就任したのは、現役引退後すぐの2014年。選手として企業チームからの誘いもあったが、かねてから興味のあった指導者の仕事を、母校そして恩師である古城隆利監督からの誘いということもあって選んだ。

 もちろん葛藤もあった。25歳という若さや4万人の観客が埋め尽くす中で投げた時の昂(たか)ぶりを考えると、一切の未練を残さないことなど不可能だった。

 その未練を吹き飛ばしてくれたのが、コーチ就任とともに入部してきた松本だった。キャッチボールの相手役を務めると衝撃を受けたという。

 つい数カ月前までプロでやっていただけに大学生のボールを速いと感じたことはなかったが、松本から放たれるボールは「こんな筋力のないクネクネした体から、こんなキレのあるボールがくるのか!」と感じたという。同時に指導者としてのやりがいが心の底から沸き上がった。

「4年間、計画通り、想像通りにいけば、すごいボールになるんじゃないかなって。それで戦力外になった時の気持ちがなくなりましたね。一番つらい時期に新たな希望を持てたことは、そういうめぐり合わせがあったのかなと思います」

 一方の東妻の第一印象も強烈だった。合流初日から「僕、練習してきたんで!」とブルペン入りを直訴。その勢いに押されて、辻も承諾し見守ったが、松本とは違う印象を受けた。