指導力と分析力が秀逸。甲子園出場を
果たした中学軟式野球の名将たち (3ページ目)
「同じことをやっても、同じ結果しか出んからね。それは中学指導で学んだことかもしれません。伝統校は何かと縛られやすいけど、中学では『こうすべき』という縛りがないから自分の色を出せる。部長にしても和田くんにしても、外からウチを見て弱みがわかるわけですし、私より勉強しているのですから聞くのは当然ですよ」
すでに高校硬式指導者になって10年以上の年月が経っているが、中学軟式指導者としての実績がずば抜けているのは明石商(西兵庫)を率いる狭間善徳監督である。
明徳義塾中の監督として全国大会優勝4度。大学の先輩である上田監督は「彼が監督になりたての頃は2年続けて勝ったこともあるけど、その後はどんどん強くなってしまった。かわいくない後輩ですよ」と笑う。
その卓越した指導は高校硬式でも健在だ。2016年春のセンバツではベスト8に進出し、今夏は初めて夏の甲子園に導いた。セカンドを守る植本亮太は「狭間野球」の特徴をこのように語る。
「監督がよく言うのは『野球は時間を使えるスポーツだ』ということです。バッティングも守備も『間(ま)を感じる』ことを大事にして、ボールがくるところをしっかりと見てタイミングを取ります。時間を大事にすることで、時には守備中にタイムを取ってピッチャーに声を掛けたり、時間をうまく使えるようになりました」
鋭く繊細な戦術眼も狭間監督の武器で、試合中にベンチで相手投手のクセをズバリと言い当てることもしばしば。そんな監督の近くで野球を学んでいるからか、「中学時代はクセなんて全然わかりませんでしたけど、高校で研究を重ねて見えるようになってきました」(植本)と選手の野球観がガラリと変わる。
夏の甲子園初戦では八戸学院光星(青森)と対戦。狭間監督は試合映像だけでなく「青森の新聞をすべて読みました」と語るほど分析、研究して臨んだという。一時は6点リードを許したものの、追いつき延長戦にもつれこむ大熱戦。8対9で惜しくも敗れたが、その実力は見せつけた。
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