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まさかの逆転負けも、木更津総合・
山下輝に「エースの品格」を見た (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「これが最後の試合になってもいい。一番自信のある真っすぐで押すところを見てほしいです」

 必要以上に感情の起伏を表に出すことなく、派手な言葉を口にすることもない。そんな悠然とした態度が、山下という人間の品格を感じさせた。

 五島監督は普段の山下について、こう評する。

「優しい子ですよ。でも、マウンドに上がれば感情を顔に出すこともないし、エースらしい選手です。去年の早川(隆久/早稲田大1年)は自分の意見を言うタイプでしたけど、山下は内に秘めるタイプですね」

 しかし、いざ甲子園のマウンドに立つと、山下は自分のストレートが本来のキレではないことに気づいたという。

「真っすぐが走っていなかったですね。立ち上がりから力みがありました」

 それでもキレのよかったスライダーを生かして5回まで1失点でしのぎ、グラウンド整備を挟んで6回を迎える頃には「力みが取れて球が走り始めていた」という。事実、6、7回はいずれも三者凡退で、計3奪三振と完璧な投球を見せていた。捕手の芦名もその手応えを口にする。

「立ち上がりにいきなりストレートとツーシームを打たれて、いつものパターンを変えて左バッターにはスライダー中心の配球にしたところ、はまった感じがありました」

 187センチの長身から投げ下ろす角度のあるストレートと、打者の手元で鋭く曲がるスライダーのコンビネーションは難攻不落のように思えた。しかし、山下は「9回に先頭(打者)を出してから徐々に疲れが出てきた」と終盤に疲労が出たことを認めている。実力の片鱗こそ見せたが、甲子園で勝利するにはわずかに体力と武運が足りなかった。

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