監督就任すぐに甲子園へ。
あのセンバツ準優勝投手の元プロがやったこと (5ページ目)
──いつも打力で圧倒できればいいのですが、力のある投手を打ち崩すのは簡単ではありません。
「打てそうにないときは、フォアボールでいい。相手はボール球を打たそうとしているのだから、しっかりと見極める──それを徹底しています。うちは公式戦10試合でフォアボールを89個も選びました。フォアボールもヒットと同じ。私はそういう評価をします。特に低めの球の見極めについてうるさく言っているので、打者が低いボールに手を出すと『なんで打つんだ!』という声がベンチから飛ぶようになりました」
──ボールの見極めをすることに特別な能力はいりません。
「はい。心がけひとつでできることです。今回、チームが勝ち上がることができたのは、ボール・ストライクをしっかり見極められたからだと思います。ただ、四国ではなんとか勝つことができましたが、全国ではそうはいきません。選手たちにはそれぞれに課題を与えています」
──具体的にはどのような課題ですか。
「ピッチャーには、球速を130キロ台後半にしてほしい。打者にもパワーをつけるようにと言っています。『いままでと同じ練習では絶対に無理だから、俺の指示を聞け』と。個々人を見れば、突出した選手はひとりもいない。だから、いまは甲子園で戦うことに対して、不安や恐怖ばかり。甲子園に出る以上、1回戦で負けて帰ってくるわけにはいかない。私が帝京高校に入学する直前のセンバツで、先輩たちは池田に0対11で負けました。次の日の練習で、通行人からヤジや罵声が飛んできたことを強烈に憶えています。『お前ら、何しに甲子園に行ってきたんだ!』『この恥さらしが!』と。甲子園はそれだけ恐ろしい場所でもあります」
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