大谷翔平が導いた原点回帰。高校球界は「打てる投手」が急増中 (2ページ目)

  • 中村計●文 text by Nakamura Kei
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 競技は成熟すればするほど、ひとつの役割が専門化してくものだ。近年、高校野球でもプロ同様、投手はピッチングに専念し、打順は下位を任されるケースが増えた。その傾向は強豪私学ほど顕著だった。地方の公立校等で、部員が少なく、やむなくピッチャーに4番を打たせるという場合を除き、かつてはよくいた「4番・エース」は、"絶滅危惧種"になりつつあったといっていい。

 しかし、それも大谷効果なのだろう、"生息数"が回復傾向にあると指摘するのはスカウトの高山だ。

「4番・ピッチャーが、また、増えてきた気がするね。大学、社会人になっちゃうと、ほとんどDH制なので、投手が打席に立つことがなくなる。そうすると、どんなに才能があってもピッチャーを続けるならバッティングはあきらめざるをえない。その点、高校は打席に立てるわけだから。選手のためにも、できる限り可能性を残しておいた方がいい。バッティング練習をして体のキレを出すという考え方もあるしね」

 同9日の近江戦、常総学院のエースの鈴木昭汰は7番を打ったが、昨秋の関東大会では初戦で優勝候補の横浜とぶつかり、佐々木監督は「勢いをつけたかった」と、打撃センス抜群の鈴木を1番で起用したこともある。

 7月3日、日本ハムの大谷がソフトバンク戦で「1番・ピッチャー」として出場し話題になったが、それよりも先に佐々木監督はそのアイデアを実行していたのだ。

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