八重高か八重商か。石垣島の野球少年たちの、それぞれの決断 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • スポルティーバ●写真 photo by Sportiva

「正直、やりづらいという気持ちはありますし、みんな、小さい頃から甲子園へ行きたいという気持ちがあったことはよく知ってます。でも自分たちが甲子園へ行くためには、八重商はいつか倒さなければならない相手ですし、決勝で当たっても1回戦で当たっても、それは同じことですから……」

 2016年6月18日――梅雨明けの沖縄には、青い空が広がっていた。

 甲子園を懸けた、沖縄の夏が幕を開ける。

 試合前、八重高はミスなく、スマートなシートノックを終えた。

 八重商はいつものように守備位置に就く際、全員がヘッドスライディングをしてユニフォームを真っ黒に汚す。シートノックでのミスは目立つが、ひとつひとつのプレーに力強さが備わっていた。全員で戦う八重高、個の力で上回る八重商……そんな図式が垣間見える。

 八重商の伊志嶺監督は言った。

「僕は相手のことはすべて知っているので……小細工をやるよりも、正統な野球をやろうと思って、仲里監督にも『ガチンコでいこう』と話しましたよ(笑)」

 一方、八重高の仲里監督はこう返した。

「伊志嶺監督は八重山の野球を変えた人ですから……この組み合わせは、八重高が甲子園へ行くためには八重商を越えなくてはならないというメッセージだと思ってます」

 午後0時15分、試合が始まった。

 八重高のエース、仲山は八重商の上位を3人で退ける。極端な外野の守備位置や、徹底した配球を見ても、選手たちの特徴を互いが知り尽くしていることがよくわかった。

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