ドラフトの隠し球か?
中京学院大サプライズ優勝を演出した山崎善隆捕手

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 今年の全日本大学野球選手権は、初出場の中京学院大が中央学院大を下し優勝を果たした。おそらく、誰も予想しなかった顔合わせ、誰も予想できなかった結末になったのではないだろうか。

 それにしても、中京学院大がなぎ倒してきた"相手"がすごかった。

 初戦で日本文理大に勝利すると、2回戦で桐蔭横浜大、準々決勝で亜細亜大を退け、準決勝では今大会もっとも勢いのあった奈良学園大を撃破。決勝戦でも中央学院大に一度もリードを許すことなく快勝。選手個々の能力の高さを十分に証明して大学野球の頂点へと上り詰めた。

大学野球選手権で大会MVPに選ばれた中京学院大の山崎善隆大学野球選手権で大会MVPに選ばれた中京学院大の山崎善隆

 優勝の立役者は誰かと問われれば、もちろん5試合すべてに登板して4勝を挙げた左腕エースの柳川優太だが、プロ注目の遊撃手・吉川尚輝の働きも"意外性"を含めて、高く評価すべきだろう。

 吉川の何が意外だったかといえば、バッティングで光っていたことだ。もともと、吉川はフィールディングで評判になっていた選手だ。吉川の高校時代(岐阜・中京高)をよく知る知人が、「フィールディングのスピードなら、間違いなく高校球界ナンバーワン。吉川よりスピードのあるショートがいるわけがない!」と言い切っていた。普段、あまり決めつけたようなモノの言い方をしない人物に、そこまで惚れ込ませてしまうほどの選手。

 吉川が大学2年のとき、リーグ戦で初めてプレーを見た。三遊間に飛んだ強烈なゴロを横っ飛びでダイビングキャッチし、座り込んだままの送球で三塁へ向かった走者を刺してみせた。その動きは、まさに動物のようだった。捕るまでならできる選手は何人もいるだろうが、そこから投げて走者を刺した動きは、人間離れした俊敏性、柔軟性がなければ成立しない。

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