清宮に立ちはだかるドクターK、聖徳学園・長谷川宙輝が西東京を熱くする

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 かつて、東京に「関東高校」という名前の高校があった。甲子園に出場したことはなかったが、東京都内では上位をうかがう強豪校だった。OBにプロ野球で本塁打王2回、打点王1回を獲得し、通算364本塁打を放った江藤智(現・巨人コーチ)がいる。

「私は江藤と入れ違いで卒業したんですけど、私らの頃は『甲子園に行け、甲子園に行け!』という学校でした。それが聖徳学園(しょうとくがくえん)になって、ガラリと方針が変わりました。中高一貫教育で六大学を目指すような、進学面に力を入れる方向にシフトしたんです」

昨年秋のブロック予選で1試合20奪三振の快投を演じた聖徳学園の長谷川宙輝昨年秋のブロック予選で1試合20奪三振の快投を演じた聖徳学園の長谷川宙輝

 そう語るのは、関東高校OBで現校名・聖徳学園で野球部監督を務める中里英亮監督だ。かつて関東高校にはリトルシニア、ボーイズなど硬式チームから選手が集まってきたが、聖徳学園になると入部希望者が激減した。大会に出れば20点を超えるような大量失点での初戦敗退が当たり前。部員が9人揃わず、大会へのエントリー自体ができない年もあった。

 そんな「どん底」を味わった聖徳学園が今夏、にわかに注目を集めている。

「長谷川を見るために、熱心に足を運んでくださるスカウトの方もいます。強豪校からの練習試合のお誘いも増えて、チームとしての実力もだんだんついてきました」(中里監督)

 今夏の聖徳学園のエース・長谷川宙輝(はせがわ・ひろき/3年)は、今年の西東京ナンバーワン左腕と目されている。身長173センチ、体重74キロと体のサイズは目立たないものの、ストレートは最速144キロ。しかも、ホームベース付近で伸びてくるような球質で、縦に鋭く落ちるスライダーとのコンビネーションによって奪三振を量産するのが特徴だ。昨秋の公式戦で1試合20奪三振をマークしたこともある。この投球スタイルはまるで松井裕樹(楽天)を彷彿とさせる。

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